研究課題/領域番号 |
21H02670
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田中 利男 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携講座大学教員 (00135443)
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研究分担者 |
杉本 和史 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (60378370)
為田 雅彦 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (10626493)
山田 佳代子 三重大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (90866948)
山本 恭子 三重大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (90892480)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイスループットスクリーニングシステム / 心毒性防御遺伝子 / 心毒性機構解析 / がん分子標的薬 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、がん分子標的薬による心毒性機構解析及び心毒性防御遺伝子の発見により臨床における心毒性の予防や制御の実現を目指す事を目的とする。そのため、独自の高感度高精度ハイスループットスクリーニングシステムにより、爆発的に増加しているがん分子標的薬の心毒性をリアルタイムに発見する。さらに、新たに心毒性が見出されたがん分子標的薬の定量的心機能障害の特徴を明らかにする。またその心毒性メカニズムを心筋トランスクリープトミクスにより解析するだけではなく、心毒性制御を可能にする各がん分子標的薬の新規心毒性防御遺伝子を探索し、その作用機序を解明する。 本研究では、新しいin vivoハイスループットスクリーニングシステムを構築し、大規模ながん分子標的薬スクリーニングを実施する。具体的には、以下の3層のシステムからなる新しいOncocardiology研究法を構築する。1)高感度ハイスループットin vivoフェノタイプスクリーニングシステム、2)定量的心機能イメージングシステム。3)心毒性が新しく見出されたがん分子標的薬については、心毒性発現濃度におけるトランスクリプトーム解析により、異常発現上昇遺伝子群と異常発現低下遺伝子群のネットワーク解析などから、心毒性防御遺伝子を解明する。 この全自動高感度ハイスループットスクリーニングシステムを構築するため2種類の心筋に選択的蛍光タンパク質が発現する透明なゼブラフィッシュを創製する。すなわち、心筋に限局しGFPが発現する透明なゼブラフィッシュMieKomachi009:MK009と、赤色蛍光蛋白質(mRFP)を接続したレポーター遺伝子を内在し心臓選択的にmRFPが発現するTg(myl7:mRFP):Tg017を、交配により透明化(nacre)し、MK069を創製する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全自動高感度高精度心毒性スクリーニングシステムを構築し、臨床心毒性との相関性を解析するために、3種類の心筋に選択的蛍光タンパク質が発現する透明なゼブラフィッシュを創製した。 緑色蛍光蛋白質(GFP) が第15染色体に挿入したゼブラフィッシュSAG4Aが、心筋選択的に発現するゼブラフィッシュと透明(nacre)ラインと交配し、MieKomachi009:MK009を創製した。 さらに、赤色蛍光蛋白質(mRFP)を接続したレポーター遺伝子を内在し心臓形成過程から心臓選択的にmRFPが発現するTg(myl7:mRFP):Tg017を、交配により透明化(nacre)し、MK069を創製した。 さらにこれら2種類を交配により、心筋選択的にGFP(緑色)とRFP(赤色)がゲノム上の異なる位置から同一個体に発現する透明MK070を創製した。 この透明心筋G F Pゼブラフィッシュ(MieKomachi009)による96ウエルプレート(ZFplate)による高感度ハイスループットスクリーニングを実施した。具体的には、全自動イメージングにより、MK009の心室面積、心室蛍光強度、心室面積×心室蛍光強度の3項目が自動計算された。その結果、予備的には臨床心毒性が明らかながん分子標的薬では明白な異常イメージが認められ、臨床心毒性の報告がない分子標的薬では異常イメージが全くないことが明らかとなった。また、同じ異常イメージでも、異なる心毒性メカニズムに対応してこれら3項目の増減方向が全く異なることが、明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第2層Oncocardiology研究である定量的心機能解析研究法は、臨床心毒性における心エコーMモード結果と、相関関係解析が可能であり、臨床外挿性についての検討が実現する。すなわち、本研究により見出された新しい心毒性がん分子標的薬の臨床心毒性病態との類似性を、以下の測定項目などにより解析する。独自の心機能測定項目である1)拡張末期径(VDd)、2)拡張末期容積(EDV)、3)収縮末期径(VDs)などの測定項目と臨床心エコーMモード測定項目の相関を解析し、前臨床と臨床の心毒性における類似性を検討する。 本研究第3層Oncocardiology研究法により、新しく見出されたがん分子標的薬の心毒性防御遺伝子を発見し、心毒性の予防や治療への臨床応用研究を展開する。 1)ハイスループット心毒性スクリーニングシステムにより新しい心毒性がん分子標的薬Aを見出し、がん分子標的薬Aの臨床心毒性出現濃度や臨床心毒性病態プロフィールとの相関を解析し、臨床心毒性への外挿性を確立する。 2)新しい心毒性がん分子標的薬Aを作用させ、心筋トランスクリプトーム解析を実施し、新しい心毒性がん分子標的薬Aのできるだけ低濃度かつ早期に異常遺伝子発現増加する遺伝子群と異常遺伝子発現低下する遺伝子群を抽出する。 3)新しいがん分子標的薬A心毒性関連遺伝子群から、新規心毒性防御遺伝子候補リストを作成し、がん分子標的薬Aにより遺伝子発現が上昇する場合は、モルフォリノアンチセンスオリゴによるノックダウンか、CRISPR-Cas9によるノックアウトにより、がん分子標的薬Aの心毒性に対する作用を指標としたスクリーニングを実施する。 4)このスクリーニングにより、最も明白ながん分子標的薬Aの心毒性防御作用を示す遺伝子を、新しい心毒性がん分子標的薬Aの新規心毒性防御遺伝子として、その作用機構を解明し、臨床応用の可能性を検討する。
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