研究実績の概要 |
全自動高感度高精度心毒性スクリーニングシステムを構築し、臨床心毒性との相関性を解析するために創製した、3種類の心筋に選択的蛍光タンパク質が発現する透明なゼブラフィッシュにより、がん分子標的薬をスクリーニングした。 緑色蛍光蛋白質(GFP)を第15染色体に挿入したゼブラフィッシュSAG4Aが、心筋選択的に発現するゼブラフィッシュと透明(nacre)ラインと交配し、 MieKomachi009:MK009を創製し、これにより進行した肝細胞がんなどの治療に使用されているsorafenibとCMLの治療に使用されるnilotinibの心蛍光面積や心蛍光強度に対する濃度依存性変化を解析した。すなわち、24時間の薬物暴露後、6時間以内に心臓動画撮影し、ImageJ心臓動画マクロプログラムで解析を行った。その結果、これら分子標的薬により、sorafenibは、蛍光面積減少かつ蛍光強度増加、nilotinibは、 蛍光面積増加かつ蛍光強度現象という、全く異なる作用を見出した。 さらに、各がん分子標的薬による心筋トランスクリプトーム解析により、まず各がん分子標的薬の心毒性機構解明を試みた。その結果、明らかに心蛍光面積や 心蛍光強度に対する濃度依存性変化が全く異なるsorafenibとnilotinibによる心トランスクリプトーム変化の明確な差異が認められた。すなわちsorafenib選択的 に発現上昇する214遺伝子、発現低下する7遺伝子、nilotinib選択的に発現上昇する83遺伝子、発現低下する292遺伝子を見出した。さらにnilotinibにより選択的に発現が増加するヒト相同心筋遺伝子は、MYH2,6,7, SRL, RYR2, TNNC1, ATP2A2などであった。現在これらのnilotinibによる心筋毒性機構や心筋毒性防御機構における機能的役割を解析している。
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