本研究では、代表者が世界に先駆けて研究を進めるミトコンドリア蛋白質p13/FMC1に注目し、本分子とその関連蛋白質とで制御されるミトコンドリア電子伝達系が、組織の発生・形成においてどのような役割を担うのかを明らかにすることを目的として実施し、最終年度にあたる2023年度は以下の成果を得た。 1) FMC1-KOマウスの肺胞形態異常の詳細を解析したところ、形態学的な異常は先天性であることの他、それと平行して発達依存的な炎症反応の亢進が起きていることが見出された。また様々な組織障害・行動変容の疾患動物モデルを用いたRT-PCR解析を行った結果、いくつかのモデルにおいてFMC1の発現誘導を確認した。 2) 異動後の研究機関においてFMC1-KOマウスの表現型を再確認したところ、膵島や白色脂肪、肺胞については異動前の研究機関で観察されたものと同様の形態異常を確認できたが、脳ヘルニアは確認できず、また生後早期の生存率も改善される傾向を認めた。 3) FMC1と機能的な代償的関係にあると推察されるLYRMファミリー分子の欠損マウスについてその繁殖を進めた結果、FMC1-KOの場合と同様に、生後早期の発達期における致死性が高まっている傾向が見出された。 以上より、FMC1やその関連蛋白が個体生存や組織の形成/障害などさまざまな生理病態反応に必要であることを実証する他、これらの分子が構成する電子伝達系で制御される組織形成は遺伝要因(と一部環境要因)の影響を大きく受けることが明らかになった。
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