研究課題/領域番号 |
21H02672
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上山 健彦 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (80346254)
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研究分担者 |
坂口 博史 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 研究員 (00515223)
足立 直子 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 助教 (70604510)
中村 高志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80724179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 後天性感音難聴 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
1. 自ら開発したNADPH oxidase 3 (Nox3) 発現細胞が赤色蛍光蛋白 tdTomato で標識される(Nox3-CreKI;tdTomato+/+)マウスを用い、耳石形成に必須のNox3由来活性酸素(ROS)発生源細胞として、内リンパ嚢・内リンパ管の管腔に面した上皮細胞を特定した。更に、Nox3が一次聴覚感受器官である蝸牛コルチ器に発現することを発見、Nox3発現細胞として、内・外有毛細胞とその周囲に存在し有毛細胞を機能・構造的に支える種々の支持細胞(内・外指節細胞、外柱細胞、クラウディウス細胞)を特定した。 2. 加えて、上記の蝸牛におけるNox3発現(tdTomato陽性)細胞数が、聴毒性で有名な抗癌剤であるシスプラチンの投与および加齢や騒音不可により上昇する事を発見した。特に、Nox3が発現誘導された外有毛細胞は、アポトーシスに陥ることを明らかにした。 3.自ら開発したNox3-knockout (KO)マウスを用いて、シスプラチン誘発感音難聴、加齢性感音難聴、騒音性感音難聴において、Nox3-KOが聴覚温存に働くことを明らかにした。 4.上記3種の主要後天性感音難聴の中で、シスプラチン誘発感音難聴と加齢性感音難聴においてNox3の関与が非常に高く、騒音性感音難聴ではやや低いが有意に関与することを明らかにした。
上記の結果は、Nox3の蝸牛コルチ器(特に、外有毛細胞細胞)での発現抑制が、後天性感音難聴の治療法開発の標的になる事を強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nox3が、シスプラチン誘発難聴、加齢性難聴、騒音性難聴等の最も代表的な後天性感音難聴の発症に寄与する事、その機序が上記3種の負荷に対応した蝸牛でのNox3の発現上昇である事を明らかにした。 今後は、原因不明の聴覚障害におけるNox3の関与とその機序を明らかにし、それらの疾患の治療法開発に繋げていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標(方針・計画)は、原因不明の聴覚障害におけるNox3の関与とその機序を明らかにし、それらの疾患の治療法開発に繋げていくことである。 そのために、我々が開発したアッセイ方法により、Nox3の発現を抑制する分子や化合物をスクリーニングする予定である。更に、Nox3の関与が示唆させる原因不明の聴覚疾患でのNox3の関与を、モデルマウスやヒトを対象にした臨床研究により、明らかにして行く予定である。
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