研究課題/領域番号 |
21H02673
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
五嶋 良郎 横浜市立大学, 医学研究科, 特任教授 (00153750)
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研究分担者 |
増川 太輝 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10711898)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | L-ドーパ / ドパミン / GPR143 / D2受容体 / 神経回路 |
研究実績の概要 |
当該年度において以下の成果を得た。 1)GPR143遺伝子欠損(GPR143-KO)マウスにおいて、D2R作動薬クインピロール(QNP)のマウス自発運動量の抑制効果は減弱する一方、D1R作動薬のSKF81297の運動量亢進作用には変化が認められなかった。QNPは、線条体において、D2R下流シグナルpS9-GSK3β、p-DARPP32レベルの上昇を引き起こした。この効果は、GPR143-KOマウス線条体において減弱した。GPR143-KOマウスにおけるQNP効果の減弱は、GPR143を背側線条体に発現することにより、レスキューされた。 2)背側線条体において、GPR143とD2Rが相互作用していることをin situ PLA法により確認した。HEK293細胞における再構成実験系において、GPR143とD2Rとの相互作用領域が、GPR143の第5膜貫通領域にあることを明らかにした。DOPAは、GPR143とD2Rとの相互作用を亢進した。D2R単独とGPR143とD2Rとを共発現する発現細胞において、QNPのcAMP産生抑制効果を比較したところ、GPR143とD2Rとを共発現する細胞において、D2R単独発現細胞に比べ、より強い抑制効果が認められた。 3)この領域を含むペプチドTM5の脳室内投与は、QNP効果を減弱し、同効果は、GPR143-KOマウスにおいては認められなかった。 4)DAには無作用、DOPAの遊離のみを選択的に抑制するDOPA合成酵素チロシン水酸化酵素(TH)の阻害剤α-methyl-p-tyrosine (α-MPT)、3mg/kg投与は、QNP作用を減弱した。一方、DOPA メチルエステル1 mg/kg投与は、DOPA遊離を増大し、QNP作用を増強した。これらの作用はいずれも、GPR143-KOマウスにおいては、認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画された主な検討項目1)小胞性DOPAトランスポーター、2)光刺激によるDA神経の選択刺激によるDOPA遊離とその効果、3)GPR143のD2Rとの機能連関、の内、3)については、すでに詳細な解析結果を国際誌に公表した。1)については、PC12細胞株におけるスクリーニング系を確立し、同実験系において、候補分子の探索を行いつつある。2)における光刺激によるDOPA遊離動態の詳細は未公表であるが、GPR143が特定のDA神経回路に発現し、D2Rを介するシグナル伝達を修飾することを明らかにし、公表した。当該年度に予定された研究計画は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、令和4年度内に取り組んだ上記1)および2)について、さらに解析を行い、小胞性DOPAトランスポーターの同定、ならびにDOPA含有小胞の証明に取り組む。また、GPR143が、D2Rと機能的連関を示す神経回路と、その機能解析を進め、DOPAがD2R機能をどのように修飾し、具体的にどのような生理機能を制御するかを明らかにする。また、小胞性DOPAトランスポターの脳内分布を明らかにし、GPR143との局在関係、あるいはDOPAの作用を媒介するGPR143以外の未知受容体同定の緒を得る。
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