研究課題
ある種の癌細胞や繊維芽細胞は様々なケモカインを発現する。ケモカインには多くの種類があるが、分類の一つとして『炎症促進性』と『抗炎症性』とに大別できる。炎症促進性サイトカインは免疫監視を促進し、抗炎症性サイトカインは免疫抑制や免疫回避を促進する。これまでに、上皮間充織形質転換(EMT)等に連動して細胞運動性・接着性を制御する『ARF6-AMAP1経路』を明らかにしている。また、膵癌細胞を用いた解析から、本経路が膵癌の免疫回避に関与することを見出し、国際特許出願を行った。引き続き、本経路を高発現する癌細胞では、ARF6-AMAP1経路の活性化・不活性化に応答して異なった種類のケモカイン類を発現することを見出した。すなわち、EMTを起こした細胞が、インターフェロンガンマ (IFNγ)刺激に対し、本経路不活性化時には主に炎症促進性ケモカインを発現し、本経路を活性化すると炎症促進性ケモカイン発現は抑制され、抗炎症性ケモカインを多く発現するようになることを見出した。これらの知見は、ケモカイン発現制御における未知の多層性が推察される。本研究では、『ある種の細胞は、ARF6-AMAP1経路活性化に応答して、IFNγなど同一刺激に対し発現するケモカインの種類を炎症促進性から抗炎症性へと変換することができる』と仮説立て、分子的詳細と生物学的意義を明らかにすることを目的とし、研究を進めた。本研究期間において、刺激応答性に抗炎症性ケモカインを発現させる主な転写因子を同定し、ARF6-AMAP1経路の活性化・不活性化と相まって制御されることを明らかにした。さらに、その制御において張力応答を行う因子が関与することを見出した。これらの解析から、ARF6-AMAP1経路は微小環境張力に応答してケモカインの種類を変換している可能性が示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 産業財産権 (1件)
Cell Communication and Signaling
巻: 21 ページ: 106
10.1186/s12964-023-01130-3
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 5203
10.1038/s41598-023-32549-w