研究課題/領域番号 |
21H02683
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
清木 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50226619)
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研究分担者 |
浅井 義之 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00415639)
浅岡 洋一 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10436644)
徳永 雅之 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10845043)
北川 孝雄 北海道医療大学, 先端研究推進センター, 助教 (20614928)
田尾 嘉誉 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30425417)
有賀 隆行 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授(特命) (30452262)
古元 礼子 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70311818)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 力学恒常性 / YAP / フィードバック / 立体臓器 / 再生 |
研究実績の概要 |
幹細胞は細胞外基質の硬さに応じて特定の細胞に分化するが、同じ細胞であり続けるために、逆に細胞外基質の硬さを維持し組織の恒常性を維持することから、これを力学恒常性と呼ぶ。私たちは、転写共役因子YAPが、力学恒常性を担うことを初めて明らかにしYAP 力学恒常性と名付けた。YAPが一過性に活性化されると臓器形成・再生を促進するが、その活性化制御機構の異常による持続性の活性化は、がん化・線維化を引き起こす。しかし、その時空間的制御機構は不明である。 本研究の目的は、ゼブラフィッシュ尾ヒレ再生系と小腸オルガノイドを用いて、YAPによる力学恒常性の時空間的ダイナミクス制御の分子メカニズムと、それが臓器形成・再生に果たす役割を明らかにすることである。 [研究I] YAP力学恒常性(YAP-MH)を担うフィードバック分子の同定のために、私たちのデータだけでなく他の報告も含めて探索してきた。 [研究II] 臓器形成・再生過程でのYAP-MH時空間的ダイナミクス解析:YAP-MHの時空間的ダイナミクスを明らかにするために、(1)YAPの力覚伝達機能はECMの力学特性の変化に応じたYAPの活性化と、(2)YAPの力学制御機能はECMの硬さを測定する系の開発を進めた。解析系として、ゼブラフィッシュ尾ヒレ再生系で特にマウスの小腸オルガノイドでのYAP活性化のライブイメージングのために、YAP-miRFP670トランスジェニックマウスをCRISPR-Cas9法を用いて作製した。96匹のF0マウスのほぼ半数がトランスジーンを持っていることを見出した。尻尾でのmiRFP670も確認しF1の生育を行い次年度で解析に使用可能になる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主に[研究2]の臓器形成・再生過程でのYAP-MH時空間的ダイナミクス解析を進めた。 YAP-MHの時空間的ダイナミクスを明らかにするために、①YAPの力覚伝達機能はECMの力学特性の変化に応じたYAPの活性化と、②YAPの力学制御機能はECMの硬さを測定する系の開発を進めた。 (1)ゼブラフィッシュ尾ヒレ再生系を用いた解析: ①尾ヒレの切断という力学特性の急な変化に対して、ヒレの再生過程でYAPの活性化部位がダイナミックに変化することが固定組織の免疫染色で明らかにされているが、正確なダイナミクスは不明である。そこで、YAP-GTIIC-GFPトランスジェニックフィッシュを用いて行ったが、GFPの発現が弱く測定が困難であった。そこで、YAPの力覚応答の標的遺伝は、私たちが同定したARHGAP18, 11Aの発現をGFPで検出するトランスジェニックゼブラフィッシュを作製するために、CRISPR-GAS9コンストラクト作成を進めた。②ECMの硬さは、切断したヒレの場所で異なることが予測される。多点で測定するために、磁気ビーズを注入する方法を確立した。 (2)小腸オルガノイドの形態が小腸と大きく異なり3-4日しか培養ができないため、より生体に近い形態を持ち1ヶ月近く培養のできるミニ腸管作成システムの構築を行った。実際の小腸陰窩と同じ形態を持たせることで、培養系でYAPメカノホメオスターシスが成立し長期間培養ができ再生も起こることから、YAPメカノホメオスターシスのダイナミクスと力学特性測定のためのライブイメージングに最適であると考えた。そこで、広島大学の共同実験施設のレーザー顕微鏡を借用し作製した。ヒトのミニ腸管を作製する別の方法が報告されたために、その方法へ変更を行うことにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である臓器形成・再生過程でのYAP-MH時空間的ダイナミクス制御に関わる分子を明らかにするために、(1) YAP活性化を可視化したトランスジェニックゼブラフィッシュを用いて、YAP活性化の時空間的パターンの変化を可視化する。そのために、尾ヒレ再生時にYAPの活性化と同じ時空間的発現をする遺伝子の下流に2A-GFPをノックインしたトランスジェニックゼブラフィッシュを同定する。(2) YAP力学恒常性(YAP-MH)を担う普遍的なフィードバック分子の同定のために、私たちのデータだけでなく他の報告も含めて探索してきた。そのため、データが大量になり解析に遅れが出ている。次年度は、遅れを取戻すよう努力する。これまでに同定した46のYAPの標的遺伝子の中から、ゼブラフィッシュ尾ヒレ再生系を用いた解析を進める。まず、46のYAPの標的遺伝子の中で、ゼブラフィッシュ尾ヒレ再生時に発現している遺伝子をバイオインフォマティクス解析により絞り込む。これらの遺伝子のヒレ再生時の時空間的発現パターンをin situ hybridization解析から、更に遺伝子を絞り込む。得られた遺伝子のgain-of-functionとloss-of-function解析を行い、ヒレ再生の表現系から目的とするYAP-MH時空間的ダイナミクス制御に関わる分子を明らかにする。(3)同定する遺伝子のYAP-MHの時空間的ダイナミクス制御の分子メカニズムを明らかにするために、その分子に応じた解析を行う。例えば新規分子であれば、BioIDを用いて結合分子を同定するなどのアプローチをとる。(4) 同定した分子の機能を変化させることにより、組織の力学特性がどのように変わるかを力学測定法により解析する。(5) 更に、同定した分子が心臓など他の臓器の再生にも働いているのか、ヒレ特異的に働くのかを明らかにする。
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