研究実績の概要 |
我々はiPS細胞樹立の親体細胞として臍帯血赤芽球を用いることで変異数が大きく減少することを点突然変異及び挿入・欠失変異のゲノムワイド解析で示してきた(臍帯血赤芽球由来iPS: CBE-iPSCs, Cord Blood Erythroblast-derived iPSCs)。その抑制機構として、変異発生の主な原因のひとつである活性酸素の発生が臍帯血赤芽球で抑えられていることを示した。R4年度においては、CBE-iPSCsの更なる詳細な解析から、抑制されている活性酸素誘導型の変異に比べ、抑制がみられない特徴的な変異パターン、即ち今後のさらなる変異低減において解明すべき変異パターンの存在を発見した。 一方で、未だ最終的には解決されていない重要な科学的問題であるiPS細胞に観られる変異がゲノム初期化特異的な現象か否かを見極める為、即ち親体細胞集団の一部にしか存在しなかった変異(pre-existing SNVs)を、単一細胞を株化する行為であるiPS化により顕在化させているのではないかという疑問に答える為、従来の親体細胞株に加え姉妹iPS株もreferenceとすることで、より効率的なpre-existing SNVsの排除を達成した変異解析系を構築した(中には1万をこえる変異を有する細胞を複数検出された。)。更に、多角的な解析からiPSCsにみられる変異がゲノム初期化時に生じていることを確認した。 これらの成果は現在論文投稿中である。
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