R5年度は、iPS細胞に生じる変異の中でも、CからTへの変異について詳細な解析を行った。iPS細胞株75株を解析した結果、全点突然変異数に対するCpGサイトにおけるCからT変異 (CpG C>T)の割合は、CpGサイトではないCからTへの変異(non-CpG C>T)の割合とは異なる傾向が認められた。このことより、CpG C>Tは、CからT変異の主な原因と考えられている脱アミノ化とは異なる機構による可能性が示唆された。また、CpG C>Tを、iPS細胞とgermlineで比較したところ、iPS細胞における頻度が高いことが明らかになった。そこで、iPS細胞におけるCpG C>Tが、ゲノム初期化の中心的分子機構の一つであるDNA脱メチル化が原因で生じる可能性を検証するため脱メチル化酵素として作用するTet1、Tet2の影響を検討し、Tet1が関与している可能性を示唆する結果を得た。更に、germline mutationに比べてiPS細胞ではCpG C>T変異がSINE、しかもAluYやAluY subfamilyという進化的に若く遺伝子発現および転位機能を維持したretrotransposonに多いことも見出した。
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