今年度は、同定した新規メンブレンコンタクト局在分子の脂質輸送活性測定について引き続き解析を行った。まず新たに同定したリガンドに対する脂質輸送活性測定のための条件とプロトコルの改変に取り組んだ。輸送された脂質を検出する方法を変更した上で条件検討を行い、新しいリガンドに対する輸送活性測定システムを完成させた。これを用いて実際の脂質輸送活性の定量測定に成功した。次に、細胞膜におけるPI4Pの検出・定量方法の開発を引き続き行った。昨年度に見いだしていた候補となるPHドメインについて、GFPや他の蛍光タンパク質との融合タンパク質として培養細胞に発現させ、局在や挙動について解析した。このPHドメインは、細胞膜、ゴルジ体、エンドソーム・リソソームに局在し、細胞質バックグランドは既存のマーカー分子に比べて極めて低いレベルに留まった。特に細胞膜における局在特性に関しては、その特異性およびサイトゾル/膜シグナル比ともに優れていた。このプローブは、阻害剤や細胞膜イノシトールリン脂質制御酵素ドメインのリクルートなどによる細胞膜PI4P量の変化だけでなく、生理的なGPCR刺激に伴うPI4P量の変動についても鋭敏なレスポンスを示したことから、優れたPI4Pプローブであることが判明した。今年度は、これらに加えて、我々が最近樹立したモデル動物を用いて、細胞膜PI4P変化が及ぼすトランスクリプトームについて網羅的比較解析を行い、膜輸送などのこれまで示唆されていたパスウエイに加えて、ある特定のシグナル伝達制御パスウエイの顕著な変動を見出すことに成功した。
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