研究課題/領域番号 |
21H02702
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小林 基弘 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00362137)
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研究分担者 |
赤間 智也 関西医科大学, 医学部, 准教授 (10548788)
長屋 匡信 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (00718033)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 卵巣癌 |
研究実績の概要 |
申請者らは最近,ガラクトースが硫酸化されたN-アセチルラクトサミン構造を認識する新規抗硫酸化糖鎖抗体を作製し,このユニークな硫酸化糖鎖が予後不良の卵巣癌に選択的に発現していることを見いだした。本研究課題では,この硫酸化糖鎖が卵巣癌の悪性形質を増大させる機序を明らかにするとともに,卵巣癌の悪性度を予測する病理診断マーカーとしての可能性を検討する。さらに,この新規抗硫酸化糖鎖抗体を近赤外線光免疫療法に応用し,卵巣癌の予後を著しく改善する新規治療法,すなわち光免疫療法開発の基盤を築く。研究計画に基づき,2022年度は,2021年度に引き続き,①卵巣癌の臨床病理学的解析,および②卵巣癌細胞株の樹立とその分子生物学的解析を行った。①について,297-11A陽性卵巣癌患者は陰性患者に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に短いことが明らかになっているが,この結果を支持する実験結果として,297-11A硫酸化糖鎖は,腹膜に特異的に発現するあるタンパク質との接着を増強することを見出した。これにより,297-11A陽性卵巣癌は腹膜播種を来し,PFSの短縮につながっている可能性が考えられる(投稿準備中)。②について,新たな細胞株の樹立に成功した。この細胞は297-11A硫酸化糖鎖は発現していないものの,別の抗硫酸化糖鎖抗体に反応することを確認した(投稿準備中)。2023年度は,これらの知見をさらに詳細に解析し,光免疫療法開発の基盤を築きたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,卵巣癌症例の病理組織学的解析を終え,ほぼ仮説通りの結果,すなわち硫酸化糖鎖を発現した卵巣癌の予後が悪いことを支持する結果が得られ,さらにそのメカニズムの一端が明らかになりつつあるため。また,卵巣癌細胞株の樹立に関しては,樹立の確率は決して高くはないが,ノウハウが蓄積してきているため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き卵巣癌細胞株の樹立を試み,可能な限り多くの細胞株,特に硫酸化糖鎖を発現する細胞株の樹立を根気よく目指す。また,細胞レベル,動物レベルの光免疫療法の実験を開始したい。これまでに得られた研究成果は適切なタイミングで論文化する予定である。
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