研究課題
申請者らは最近,ガラクトースが硫酸化されたN-アセチルラクトサミン構造を認識する新規抗硫酸化糖鎖抗体を作製し,このユニークな硫酸化糖鎖が予後不良の卵巣癌に選択的に発現していることを見出した。本研究課題では,この硫酸化糖鎖が卵巣癌の悪性形質を増大させる機序を明らかにするとともに,卵巣癌の悪性度を予測する病理診断マーカーとしての可能性を検討する。さらに,この新規抗硫酸化糖鎖抗体を近赤外線光免疫療法に応用し,卵巣癌の予後を著しく改善する新規治療法,すなわち光免疫療法開発の基盤を築く。研究計画に基づき,2023年度は,①卵巣癌の臨床病理学的解析の論文化,および②卵巣癌細胞株の樹立とその分子生物学的解析を行った。①に関しては,卵巣漿液性癌で297-11A硫酸化糖鎖陽性例が多く,その発生母地である卵管上皮分泌細胞で特異的に発現していること,また297-11A硫酸化糖鎖抗原の生合成はKSGal6ST硫酸転移酵素が触媒していること,ムチンコアタンパク質MUC16が297-11A硫酸化糖鎖のコアタンパク質として機能している可能性が高いこと,そして,297-11A硫酸化糖鎖陽性卵巣癌患者は陰性患者に比べて無増悪生存期間が有意に短いことを論文にまとめ,Lab Invest誌に掲載された。②に関しては,卵巣明細胞癌由来の細胞株を樹立することに成功した。この細胞株は297-11A硫酸化糖鎖は発現していないものの,低硫酸型ケラタン硫酸を認識するR-10Gおよび294-1B1抗体に反応することを論文にまとめ,Hum Cell誌に掲載された。最後に,光免疫療法開発の準備を進めていたが,フタロシアニン色素の特許を楽天に取得されてしまったため,研究遂行が困難となった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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