研究課題
病理診断は従来から、がん等の臨床症例の最終診断を担ってきたが、がんゲノム医療が社会実装された今日にあっては、従来通り形態像のみに基づく組織型分類にとどまるべきではない。病理診断学は、ゲノム等オミックス情報を取り込んで、ブレイクスルーを果たすべきである。折しも人工知能 (AI)研究が隆盛を迎え、 病理画像はAIによるモデル構築に適した素材である。そこで本研究は、AIの適切な支援を受けることにより、病理形態像とオミックス情報を融合させ、がんの治療奏効性・有害事象・予後を予測する深層学習モデルを構築することを目的とする。予測時のAIの着眼点を可視化し、形態学的診断基準に翻訳することにより、 病理医が顕微鏡で見るだけでモデルと同等の治療奏効性・有害事象・予後予測を可能にすることを目指した。本研究は「病理医とAIの創造的協働による、オミックス情報を統合した新しい病理診断の創出」を図るものである。腎細胞がん手術検体の病理プレパラートバーチャルスライドデータならび低・高倍率顕微鏡写真を用い、オーロラキナーゼ阻害剤の適応となる可能性のある予後不良なCpGアイランドメチル化形質 (CIMP) 陽性腎細胞がんの、畳み込みニューラールネットワーク (CNN)モデルを構築した。剖検症例の肝・肺・心・胃等正常主要臓器の光学顕微鏡画像を用い、転移学習の手法に改良を加えた。さらに、gradient-weighted class activation mappingを用いて、CNNモデルがCIMP陽性・陰性の判別時に病理画像のどの領域に着目しているか可視化して、病理医が顕微鏡像をもとにDNAメチル化データを知ることなくCIMP診断を再現した。現在、エピゲノム情報 (CIMPの有無)と統合すべき多層オミックス情報を取得し、モデルの予後予測力の向上を図っている。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Pathology International
巻: 74 ページ: 167~186
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https://pathology.med.keio.ac.jp
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