研究実績の概要 |
食物アレルギーは、食物抗原と抗原特異的IgE抗体の免疫複合体がマスト細胞からの脱顆粒を誘導することにより惹起される。しかし、小中高生の約0.5%が罹患する食物アナフィラキシーの発症機序の詳細は明らかではないことから、発症機序の解明と予防法の確立は重要な課題である。申請者は、食物アナフィラキシーの発症には好塩基球の過剰な活性化が深く関与しており、それが抑制性免疫受容体Allergin-1により制御される機序を明らかにした(Lin H. et al, Int Immunol, 32: 213, 2020)。この知見は、Allergin-1のリガンドが食物アナフィラキシーの予防における標的分子となりうる可能性を示唆する。本研究課題では、食物アナフィラキシーの病態解明と予防法の開発を目的として、食物アナフィラキシーモデルにおける①Allergin-1リガンドの生理的機能、②Allergin-1リガンドによる発症予防効果を明らかにする研究を行う。 2021年度は、Allergin-1とそのリガンドの結合に必須な条件を明らかにした。このことは生体内のいつどこでAllergin-1がリガンドと結合しうるのかを推察する上で重要な知見となる。さらに、局所アレルギーモデルを用いて、Allergin-1リガンドを投与することで病態を抑制することができることを示した。この知見は、Allergin-1リガンドを用いたアレルギー疾患制御のproof of conceptを得たことを示す。
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