研究課題
培養系において肝細胞障害から線維化に至る過程を定量的に評価できれば、新たな肝疾患治療薬の開発に貢献する。肝疾患モデルを開発するためレポーターiPS細胞の有用性について検証した。ACTA2-Fluc/AAVS1-RlucレポーターiPS細胞から静止期肝星細胞を調製し、二次元培養系において肝星細胞の活性化をFirefly luciferase(Fluc)活性で評価し、細胞数をRenilla luciferase(Rluc)活性で評価した。Fluc活性は肝星細胞の活性化に伴い経時的に上昇し、Rluc活性は細胞数の増加に伴い上昇した。また、Fluc/Rluc値によって、肝星細胞一細胞あたりの活性化割合を算出することができた。次に、ACTA2-Fluc/AAVS1-RlucレポーターiPS細胞から調製した静止期肝星細胞とヒト肝がん由来細胞株(HuH-7)を用いて三次元共培養系を作製し、アセトアミノフェンによる肝障害を誘導した。肝障害誘導後、Fluc/Rluc値は増加し、肝星細胞の活性化が示唆された。同様の結果は、iPS細胞由来の肝前駆細胞との三次元共培養系においても確認されたが、肝障害誘導後のFluc/Rluc値の増加割合は低く、培養系の改善が必要であった。一方、iPS細胞由来の静止期肝星細胞とマウス肝臓由来の肝細胞の二次元共培養系においては、それぞれの細胞を同一の培養系で維持することが困難であった。
2: おおむね順調に進展している
ACTA2-Fluc/AAVS1-RlucレポーターiPS細胞から静止期肝星細胞を調製し、レポーターの有用性、定量性について二次元培養系で検証した。また、iPS細胞から作製した静止期肝星細胞とマウス肝臓由来肝細胞、iPS細胞由来肝前駆細胞、ヒト肝がん由来細胞株との二次元/三次元共培養系を作製した。共培養系はアセトアミノフェン、四塩化炭素、チオアセトアミドによる肝障害モデルに加え、B型肝炎ウイルス感染モデルに応用した。以上より、レポーターiPS細胞由来静止期肝星細胞の有用性が示され、肝疾患モデル確立の予備的検討が実施できたため、おおむね順調に進展している。
iPS細胞由来の肝細胞、静止期肝星細胞、マクロファージを用いて二次元および三次元共培養系を作製し、それぞれの細胞を長期 間維持することが可能な培養条件を検討する。共培養による肝細胞の機能化、成熟化をCYP3A4、アルブミン、HNF4a等の肝細胞マーカーの発現 を指標に解析する。また、作製した共培養系において、さまざまな肝細胞障害を誘導し、肝星細胞の活性化を評価する。ACTA2遺伝子の下流に 挿入したレポーター遺伝子(RFP、Firefly luciferase)に加え、各種のコラーゲン分子(COL1A1、COL3A1等)を解析し、肝細胞障害が星細胞 の活性化に与える影響について明らかにする。iPS細胞から作製した静止期肝星細胞、活性化肝星細胞の網羅的遺伝子発現解析を行い、肝星細胞の活性化機構について解析する。 肝の障害を取り除くと、活性化肝星細胞はアポトーシスを起こすか静止期状態に近い脱活性化状態になる。脱活性化肝星細胞は、線維の産生と 増殖を止め、PleiotrophinやMidkine等の肝細胞の環境因子を発現し、線維化改善のみならず肝組織の正常化にも寄与する。そこで、iPS細胞由 来の活性化肝星細胞の脱活性化能を解析し、肝疾患モデルや薬剤スクリーニング系への応用の可能性について検討する。
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