本研究では、ヒトiPS細胞からの肝構成細胞分化誘導技術を基盤として、肝細胞障害から肝線維化・肝硬変へ至る過程をin vitroで再現できる肝疾患モデルの開発を計画した。2021年度までに、ヒトiPS細胞由来の静止期星細胞の活性化をFirefly luciferase(Fluc)で評価し、細胞数をRenilla luciferase(Rluc)で評価する系を確立し、Fluc/Rluc値を算出することで肝星細胞一細胞あたりの 活性化割合を算出できることを確認した。また、iPS細胞から調製した静止期肝星細胞とヒト肝がん由来細胞株(HuH-7)を用いて三次元共培養系を作製し、肝障害誘導後に肝星細胞の活性化が誘導される可能性を示した。2022年度は、ヒトiPS細胞由来の静止期肝星細胞とヒト初代培養肝細胞の共培養系を作製するため、培養条件を検討した。肝星細胞培養用培地と肝細胞培養用培地を種々の割合で混合し、ヒトiPS細胞由来肝星細胞を培養した結果、肝細胞培養用培地にROCK阻害剤を添加した培地で細胞を維持できることが分かった。また、ヒトiPS細胞から静止期肝星細胞、活性化肝星細胞を調製し、RNAseqを実施した。GO解析、KEGGパスウェ イ解析を行い、細胞分裂、細胞外基質、発生に関与する遺伝子群に変化が認められた。2023年度はヒトiPS細胞から老化肝星細胞を作製し、一連の培養系で静止期肝星細胞が活性化し、細胞老化する過程を再現することに成功した。RNAseq解析によって、老化肝星細胞の細胞老化関連分泌因子群を同定した。
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