研究課題/領域番号 |
21H02718
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
宮本 達雄 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40452627)
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研究分担者 |
浅岡 洋一 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10436644)
阿久津 シルビア夏子 (AkutsuSilviaNatsuko) 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (10822299)
清木 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50226619)
松浦 伸也 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (90274133)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Patau症候群 / 繊毛病 / 一次繊毛 / iPS細胞 / 染色体異数性可塑性 |
研究実績の概要 |
一次繊毛は細胞表面に1本の毛様に発達する構造であり、個体発生に必要な細胞外シグナルを受容するセンサーとして機能する。13トリソミー症候群(Patau症候群)は脳・心奇形に加えて、「繊毛病」を特徴づける多発性腎嚢胞、多指症、内臓逆位を合併する。患者皮膚細胞では繊毛形成が低下しており、13番染色体上の繊毛「抑制」遺伝子のコピー数増加による繊毛病発症が示唆される。しかし、Patau症候群は、メンデル遺伝病と異なり、家系情報に基づく連鎖解析が利用できないため、その繊毛病責任遺伝子は未解明である。 近年、細胞初期化によって、一定の頻度で、染色体異数性が正常核型へレスキューされる現象が相次いで報告されている。本研究では、染色体可塑性を利用したトリソミー疾患の新たな遺伝医学解析フローを確立して、Patau症候群の繊毛病発症機構の解明を研究目的としている。2021年度までに、Patau症候群患者皮膚繊維芽細胞に山中因子を導入して、同一遺伝的背景をもつトリソミー13と正常核型iPS細胞を樹立して、これらの細胞間の遺伝子発現をRNA seq解析で評価したところ、トリソミー13ーiPS細胞で発現亢進が認められた13番染色体上遺伝子を抽出した。2022 年度には、このうち、13q22-13q34に存在する候補遺伝子の1つをhTERT-RPE1細胞で破壊したところ、血清存在下においても、繊毛形成が促進された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、2021年度までに、同一のPatau症候群患者由来のトリソミーとダイソミーiPS細胞間での遺伝子発現解析を行い、トリソミー13で発現亢進している遺伝子を抽出してgain of functionアプローチによる繊毛抑制能の評価を行って絞り込んだ3遺伝子の一つの機能喪失実験を行った。具体的には、hTERT-RPE1細胞株で、当該遺伝子をCRISPR-Cas9システムを破壊した細胞を樹立して、血清存在下での繊毛形成を評価した。正常細胞では、血清存在下では、繊毛形成が抑制されるのに対して、遺伝子破壊細胞株では、同条件でも繊毛形成が確認された。このところから、候補遺伝子が繊毛抑制に必要十分であることが示されたため。
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今後の研究の推進方策 |
繊毛病候補遺伝子について、欠損細胞株の作製を進め、繊毛抑制能力の低下を実証する。また、ゼブラフィッシュ初期胚に導入して、Patau症候群で認められる多発性嚢胞腎や内臓逆位を検討することで、個体レベルでの病態を引き起こす遺伝子を同定する。
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