研究課題
一次繊毛は細胞表面に1本の毛様に発達する構造であり、個体発生に必要な細胞外シグナルを受容するセンサーとして機能する。13トリソミー症候群(Patau症候群)は脳・心奇形に加えて、「繊毛病」を特徴づける多発性腎嚢胞、多指症、内臓逆位を合併する。患者皮膚細胞では繊毛形成が低下しており、13番染色体上の繊毛「抑制」遺伝子のコピー数増加による繊毛病発症が示唆される。しかし、Patau症候群は、メンデル遺伝病と異なり、家系情報に基づく連鎖解析が利用できないため、その繊毛病責任遺伝子は未解明である。近年、細胞初期化によって、一定の頻度で、染色体異数性が正常核型へレスキューされる現象が相次いで報告されている。本研究では、染色体可塑性を利用したトリソミー疾患の新たな遺伝医学解析フローを確立して、Patau症候群の繊毛病発症機構の解明を研究目的としている。Patau症候群患者皮膚繊維芽細胞に山中因子を導入して、同一遺伝的背景をもつトリソミー13と正常核型iPS細胞を樹立して、これらの細胞間の遺伝子発現をRNA seq解析で評価したところ、トリソミー13ーiPS細胞で発現亢進が認められた13番染色体上遺伝子を抽出した。2024 年度には、このうち、13q22-13q34に存在する候補遺伝子のうち、網膜色素上皮細胞株および腎集合管細胞株で繊毛抑制活性を示し、ゼブラフィッシュ胚へのmRNA注入により内臓逆位を示す遺伝子として、転写因子およびアクチン制御因子をそれぞれ1遺伝子、計2遺伝子をPatau症候群の繊毛病責任遺伝子として同定した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Genomics
巻: 4 ページ: 100510~100510
10.1016/j.xgen.2024.100510
The American Journal of Human Genetics
巻: 110 ページ: 1086~1097
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