研究課題
腫瘍研究領域では、樹立された細胞株を実験モデルとして使用することで、数多くの重要な病態生理が明らかにされてきた。しかし腫瘍組織を構成する個々の細胞の機能や寄与度の多様性・複雑性が明らかになるにつれ、単一の細胞株を使った研究だけでは腫瘍全体の理解には至らないというコンセンサスが得られつつある。本研究課題では、患者細胞ライブラリおよび単一細胞遺伝子発現解析によって、腫瘍組織を構成する様々な細胞の機能的差異や集団内における役割、細胞間コミュニケーションシステムを明らかにする。2023年度は、正常肺組織の1細胞RNA-seqデータを公共データベースから取得し、100症例以上のデータセットを統合した大規模な1細胞RNA-seqデータセットを構築した。構築されたデータセットには、性別、年齢、喫煙歴などの肺組織に関連する臨床情報が付随しており、それらの情報を用いて、喫煙や加齢が肺組織に含まれている40種類ほどの細胞にどのように影響を与えるかを遺伝子発現の観点から解析した。その成果をまとめて、Cancer Research Communications誌に責任著者として発表した。また、造骨性転移を起こす前立腺がん細胞が骨組織の骨芽細胞に与える影響について、がん細胞と骨芽細胞が分泌する細胞外小胞エクソソームの観点から細胞間相互作用の解析を行った。造骨性転移を起こす前立腺がん細胞に由来するエクソソームを受け取った骨芽細胞から分泌するタンパク質ががん細胞の増殖を抑えることを見出した。前立腺がんが造骨性転移を起こすことが多いが、その予後は溶骨性転移よりも良いことが臨床的に明らかになっており、その原因の一端を明らかにしたと考えている。それらの結果を、がん専門誌であるMolecular Oncology誌に責任著者として発表した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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