マラリアはハマダラカの吸血によって媒介されるマラリア原虫による熱帯病であり、年間60万人が犠牲となっている。マラリア原虫はハマダラカの唾液とともに体内に侵入し、肝細胞に感染し、2週間後にはメロゾイトとなって末梢赤血球に侵入する。赤血球内で増殖分裂し、おおよそ48時間でそのサイクルを繰り返す。これを赤血球期と呼ぶ。感染赤血球は成熟すると血管内皮細胞に接着することが知られ、患者末梢血にはメロゾイト感染後12時間までの幼若な感染赤血球しか存在しない。マラリアの重症度は、感染赤血球の血管内皮細胞表面への接着と密接に関連している。これには多型表面抗原(VSA)と呼ばれる分子が重要である。VSAは繰り返しと多様性に富む配列を持ち、感染赤血球表面に表出する。VSAにはPfEMP1 (60 遺伝子)、Rifin (160 遺伝子)、Surfin (10遺伝子)、STEVOR(30遺伝子)がある。VSAは相互に排他的に発現することが知られており、PfEMP1のうちひとつ、Rifinのうちひとつ、というように発現する。本研究はRifin遺伝子を網羅した我々のタンパク質ライブラリー、ヒトタンパク質を網羅したタンパク質ライブラリー、そして新型の近接ビオチン化酵素を用いて、Rifinによる宿主タンパク質の認識機構を分子レベルで明らかにするものである。 アルファスクリーンによる探索の結果、ヒト白血球表面にある自然免疫に関与するファミリー遺伝子産物と重要Rifin分子が相互作用することを認めた。そこで本年度はその分子間相互作用を表面プラスモン共鳴などを用いて、さらに詳細に解析することに成功した。
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