研究課題/領域番号 |
21H02732
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
Toma Claudia 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40325832)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レプトスピラ / 尿細管上皮細胞 / 細胞間接着装置 |
研究実績の概要 |
上皮細胞では、タイト・ジャンクション、アドへレンス・ジャンクション、デスモソームなどからなる細胞間接着装置がお互いを結合させている。本研究課題では、病原性レプトスピラがどのような分子やシグナルを介して細胞間接着装置を破壊するかを明らかにし、レプトスピラの標的臓器への移行を遮断するための新たな治療法への分子基盤構築を目指す。 令和3年度は、病原性レプトスピラで感染した尿細管上皮細胞のプロテオーム解析により、プラコフィリン4(PKP4)が顕著に低下していることが明らかになった。アルマジロファミリータンパク質の1つであるPKP4は、非感染細胞ではデスモソームとアドへレンス・ジャンクションに局在していたが、感染24時間後の細胞ではデスモソームのPlakoglobin及びアドへレンス・ジャンクションのE-cadherinと共に細胞間での局在が低下していることを認めた。また、定量的リアルタイムPCRやウェスタン・ブロッティングの解析結果によって、PKP4の発現量は非感染細胞と有意な差を示さなかったが、感染18時間後からプロテアーゼによって消化されることが示唆され、感染24時間後にはその減少が有意な差を示した。さらに、エンドサイトーシス阻害剤であるDynasoreとPitstop-2は、細胞間接着装置に局在するPKP4の低下を阻止したが、タンパク量の減少は阻止されなかった。 これまで、レプトスピラの感染によるE-cadherinの細胞内取り込みの誘導が細胞間接着装置の破壊の引き金であると考えていたため、E-cadherinの細胞内取り込みを誘導する病原細菌「リステリア」と比較実験を行ったところ、リステリアで感染した細胞ではPKP4の減少は認めなかった。以上の結果から、病原性レプトスピラはPKP4を標的にし、細胞間接着装置の破壊を誘導することが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症拡大のため一時期沖縄県内の活動制限や消耗品の納品の遅れなどがあったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究結果では、レプトスピラの細胞間接着装置破壊にはデスモソームに局在するタンパク質が標的になると示唆されたため、令和4年度は、デスモソーム構造に焦点を当て、レプトスピラの細胞間接着装置の破壊戦略の解析を下記のように推進する: 1. デスモソーム構成タンパク質の局在の解析:デスモソームは、カドヘリンファミリーに属するデスモグレインとデスモコリンの2つの膜タンパク質と裏打ちタンパク質であるプラコグロビンとプラコフィリン(PKP1-PKP4)、及び中間径フィラメントタンパク質ケラチンと結合するデスモプラキンからなる複合体が基本的な構成単位である。尿細管上皮細胞を病原性レプトスピラで感染することによって、この複合体の局在変化を蛍光免疫染色および細胞分画後のウェスタン・ブロッティングにて調べる。さらに、デスモプラキンに結合する中間径線維の状態も精査し、デスモソーム破壊による細胞骨格への影響を評価する。 2. 細胞間接着装置の破壊に関与している細菌因子の同定: レプトスピラの感染によって減少するPKP4は、C末端に存在するPDZ結合配列を介してPDZドメインを含むタンパク質と結合することが報告されてきた。これまでの研究成果はレプトスピラが誘導する細胞間接着装置の破壊には菌が産生するプロテアーゼや菌体表面の外膜タンパク質が関与していることが示唆された。我々はPDZドメインを含むプロテアーゼをいくつか同定しており、本年度は、これらの因子の欠損株の作成や組換えタンパク質を精製し、デスモソーム破壊への役割を明らかにする。また、細菌因子に対する特異的抗体を作成し、各抗体がレプトスピラによるデスモソーム破壊を阻止するかを調べる。
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