研究課題/領域番号 |
21H02734
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高田 礼人 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 教授 (10292062)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウイルス / 細胞侵入 / 抗体 / エピトープ / 治療薬 |
研究実績の概要 |
エボラおよびマールブルグウイルスは、ヒトまたはサルに急性で致死率の高い感染症(エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱)を引き起こす。現在までに承認された抗体医薬はエボラウイルス1種のみに特異的であり、マールブルグウイルスには全く効果が無い。本研究は、これまでエボラウイルスに対する抗体に関して得られた知見を基にして、ウイルスの細胞侵入に関わる特定のエピトープに着目することによって、マールブルグ出血熱に対して有効な抗体医薬の開発に資する事を目的とする。 昨年度に作出したマールブルグウイルス表面糖蛋白質(GP)に対する抗体を産生するハイブリドーマを用いてマウス腹水を採取し抗体を精製した。GPの遺伝子をゲノム内に組み込んだ増殖性の水疱性口炎ウイルス(シュードタイプウイルス)を抗体存在下でプラックを形成させることによってエスケープミュータントを選択した。エスケープミュータントGPに生じたアミノ酸変異を解析し、得られた抗体のエピトープの位置を推定した。その結果、得られた抗体は、GPのレセプター結合(NPC1との結合)を阻害する抗体またはウイルスエンベロープと細胞膜間の膜融合を阻害する抗体であることが推測された。 フィロウイルスのレセプターであるNPC1分子上のドメインC内に存在するloop構造(loop1およびloop2)を模した合成ペプチドを、ヒトNPC1のアミノ酸配列を基にさらに設計した。非増殖性シュードタイプ水疱性口炎ウイルスを用いてこれらのペプチドによる中和活性の解析を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のマールブルグウイルス株を効率的に中和するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが10クローン以上得られ、エスケープミュータントの選択とアミノ酸変異解析に至った。さらに、マールブルグウイルス感染阻害薬候補となる合成ペプチド(アミノ酸配列)を複数見出した。
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今後の研究の推進方策 |
エスケープミュータントに生じたアミノ酸変異をGPの立体構造上で詳細に解析する事によって、エスケープ変異のメカニズムを解析する。さらに、競合ELISAによって抗体のエピトープ領域に関する情報を得る。また、GP-NPC1結合試験等によって中和のメカニズムを探索する。可能であれば動物モデルで治療効果を確認する。
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