エボラおよびマールブルグウイルスは、ヒトまたはサルに急性で致死率の高い感染症(エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱)を引き起こす。現在までに承認された抗体医薬はエボラウイルス1種のみに特異的であり、マールブルグウイルスには全く効果が無い。本研究は、これまでエボラウイルスに対する抗体に関して得られた知見を基にして、ウイルスの細胞侵入に関わる特定のエピトープに着目することによって、マールブルグ出血熱に対して有効な抗体医薬の開発に資する事を目的とする。 昨年度までに作出したモノクローナル抗体について、マールブルグウイルス表面糖蛋白質(GP)の遺伝子をゲノム内に組み込んだ増殖性の水疱性口炎ウイルス(シュードタイプウイルス)を抗体存在下でプラックを形成させることによって、エスケープミュータントを複数(それぞれの抗体につき5-9クローン)選択した。エスケープミュータントGPに生じたアミノ酸変異を解析し、分子表面上にマッピングし得られた抗体のエピトープの位置を推定した結果、これらのモノクローナル抗体は、GPのレセプター結合(NPC1との結合)を阻害する抗体またはウイルスエンベロープと細胞膜間の膜融合を阻害する抗体であることが推測され、3種類に大別された。うち1種類は複数のウイルス株を中和する交差反応性抗体であった。得られた全ての抗体について、CDRを含む可変領域の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を決定した。さらに、マールブルグウイルス感染マウスモデルを用いて、抗体投与の治療効果が確認できた。
|