研究課題
SARS-CoV-2のマウスモデルの確立においては、マウス馴化に必須と報告されている変異を複数持つMA-10株をCPERを用いたリバースジェネティクスで作出した。このMA-10はBalb/cマウスで効率的に感染することが報告されていたが、我々の検討でも同様に効率的な増殖が認められた。しかし、他の系統のマウスでの増殖性は低かったが、高力価での感染によって、一定レベルの増殖性と病原性が認められることが明らかになった。また、Akalucを搭載した組換えSARS-CoV-2-AkalucはAkaluc遺伝子のGC含量をSARS-CoV-2に合わせて低下させることによって、うまく搭載させることができた。2022年度は、in vitroでの性状解析を行った。ノーザンブロッティングで、正しいRNAサイズの組換えウイルスが作製されていた。また、in vitroでの増殖性を評価したところ、野生型ウイルスと同等の増殖性が確認された。また、5回以上の継代を行っても、Akaluc遺伝子は維持されており、ルシフェラーゼ活性も維持されていた。今後は、in vivoでのImagingにおける有効性を明らかにする。さらに、CPERを駆使した高速リバースジェネティクスによって、様々な変異株のスパイク遺伝子を持つキメラウイルスを作製して、その組換えウイルスの性状解析を行った。変異株が出現するたびに、迅速に組換えウイルスを作製することによって、変異株の病原性や免疫逃避などをリアルタイムに解析することができた。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、研究が推進できており、業績も発表できているため、順調な進展と判断した。
SARS-CoV-2-Akalucを感染させて、Imagingを行なった肺組織の病理組織解析を行い、Imagingで感染が検出された部位で炎症の誘導やウイルス抗原が検出できることを免疫染色など病理解析の手法を用いて検証する。ワクチンや抗ウイルス薬のin vivoでの有効性の評価ではこれまでの予備実験の中で、ハムスターへのmRNAワクチンの投与によってSARS-CoV-2の感染予防効果を認めた。SARS-CoV-2-Akalucを用いて生体における抗ウイルス効果を検証する。一方、マウス感染モデルの構築においては、これまでの検討で、マウスに馴化させるための変異を搭載したMA10株を組換えウイルスで作製して、マウスでの増殖性と病原性を確認した。本年は、後遺症を評価可能なモデルの確立を試みる。マウスへの以下の3種類の感染系を用いてより有用な動物モデルの確立を目指す。① 馴化ウイルスであるMA10のマウスへの経静脈感染:分担者の田村が感染することが可能な変異と流行変異株のスパイクを持つマウス馴化ウイルスを作製し、ウイルスの経静脈接種は実験系を樹立した村上が担当する。② 馴化ウイルスの髄腔内感染:髄腔内接種は経験がある福原が担当する。③ ヒトACE2トランスジェニックマウスへの感染:①または②でのウイルスの増殖性が低い場合は全身の組織での高い増殖性が確認されている本モデルを用いる。様々な組織での増殖性はリアルタイムPCRでのウイルス量の評価だけでなく、Akalucを搭載したレポーターウイルスを用いたImagingや病理標本における抗原の検出を駆使し、ウイルスの時空間的挙動を評価する。また、津田はCPER技術を駆使して、引き続きSFTSVのリバースジェネティクスの確立を試みる。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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