研究課題/領域番号 |
21H02740
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
新中須 亮 愛媛大学, 学術支援センター, 准教授 (00451758)
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研究分担者 |
井上 毅 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (80466838)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫記憶B細胞 / 変異インフルエンザウイルス / 胚中心 |
研究実績の概要 |
2022年度は、引き続き、メモリーB細胞を中心としたStem特異的B細胞が変異ウイルス抗原により活性化される際の生体内での動態に関して評価を行った。本年度は特に、B細胞抗原受容体(BCR)レパトアについて、その特徴を特にBCRへの変異導入数を基に評価したところ、プラズマ細胞への分化は比較的変異数の多い一次メモリーB細胞から分化する傾向であり、逆に2次胚中心(GC)B細胞には比較的変異数の少ない細胞から分化している傾向がみられた。また、2次GC B細胞の変異数の経時的な変異を追ったところ、時間が経つにつれ変異数が増えていく傾向にあった。以上の結果より、2次GC B細胞へは比較的親和性の低い1次メモリーB細胞から中心的に誘導され、1次抗原とは異なる新たな抗原(2次抗原)に対しても新たに親和性成熟を起こし、1次抗原のみならず2次抗原に対してもよりフィットした広域交差反応性B細胞が誘導されることが予想された。 また、変異抗原によるワクチン接種後の免疫応答に影響を与えるうる要素の評価ならびにメカニズム解明と効率的なメモリーコンパートメント形成誘導法の探索として、2022年度は、特に、ii)2次感染時に誘導された抗体によるウイルス抗原マスキング効果による影響について評価を行った。この実験では特に、通常では、2次抗原感作時に新規にナイーブB細胞やメモリーB細胞から誘導される抗体を人為的に誘導できないよう細工をしたマウスを用い、細工なしのマウスと比較したところ、期待通り、2次GC細胞誘導の増加が認められた。しかしながら細工なしマウスとの差や実際のナイーブ/メモリーB細胞からのGC誘導効率は、期待した程大きくなかったことから、二次免疫応答前に既に存在している抗体もまた、2次GC細胞誘導に大きな影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度より、所属が大阪大学免疫学フロンティア研究センターから愛媛大学学術支援センター医科学研究支援部門に変わり、大阪大学で行っていた実験を愛媛大学で実施するため、研究環境の整備を一から始める必要があった。そのため、当初予定した研究の一部が進んでおらず計画よりもやや遅れてしまっている。現在は、愛媛大学での研究環境もかなり整備されてきているため、2023年度はその遅れを取り戻すため、積極的に研究を進めるよう計画を立てているところである。
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今後の研究の推進方策 |
1)「メモリーB細胞を中心としたStem特異的B細胞が変異ウイルス抗原により活性化される際の生体内での動態やメモリーコンパートメント形成に関わる細胞群の特徴評価」 本年度は、一次感染で誘導されたStem特異的メモリーB細胞やその後、変異ウイルス株によるワクチン接種時にナイーブやメモリーB細胞から誘導されたStem特異的GC B細胞、メモリーB細胞、プラズマ細胞について、作成したB細胞受容体<BCR>(抗体)リストをもとに、クローニングを行う。さらに、得られた抗体について、生化学的手法を用い、1)親和性、2)HA型の交差反応性など、抗体の性質・特徴の正確なデータを取得する。これまでに得られてる結果と今回の結果を元に本課題の疑問点について詳細に検証し最終的な結論を出す。 2)「変異抗原によるワクチン接種後の免疫応答に影響を与えるうる要素の評価ならびにメカニズム解明と効率的なメモリーコンパートメント形成誘導法の探索」 本年度は検証する3つの項目のうち、引き続き、i)一次感染や2次感染時に誘導された抗体によるウイルス抗原マスキング効果による影響、ii)メモリー濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)の存在による影響についての評価を中心に行い、最終的な結論を出す。 本実験では、i)については期待する傾向の結果が得られているので、引き続き結論を確定するための実験を実施する。ii)については、誘導型Thf特異的欠損マウスを用いたメモリーTfh細胞欠失マウスにおいての免疫応答に関する評価実験を行う。また、長期生存胚中心Tfh細胞を選択的に除去できる新規マウスについても実験を行い、2つの実験結果をもとに、最終的な結論を出す。
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