• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

T細胞におけるDAMPs-GPCRs経路活性化を介した腸管炎症制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02747
研究機関大阪大学

研究代表者

香山 尚子  大阪大学, 高等共創研究院, 准教授 (40548814)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード潰瘍性大腸炎 / GPCRs / DAMPs
研究実績の概要

潰瘍性大腸炎とクローン病に大別される炎症性腸疾患(IBD)は、日本において患者数が増加している疾患であるが、根本的治療法の開発に至っていない。細胞傷害関連分子パターン(DAMPs)による無菌性炎症の誘導は、組織修復および生体恒常性維持に必須である。しかし、過剰もしくは遷延性のDAMPs依存的な炎症応答は組織破壊につながるため、内在性DAMPsの量およびシグナル伝達経路は厳密に制御される必要がある。本研究では、GPCRsを介したDAMPsの認識が腸管恒常性維持および腸管炎症発症とその病態におよぼす影響を明らかにすることで、新規治療法開発の基礎基盤提供を目指す。
研究代表者は、2021年度実施研究において、野生型マウスに比べP2ry14欠損マウスでデキストラン硫酸塩(DSS)誘導性大腸炎の軽減が示されることを見出していた。2022年度実施研究において、潰瘍性大腸炎患者の腸管組織ではDAMPsの一種であるUDPglucoseを認識する受容体P2RY14の発現が亢進していることを明らかにした。さらに、マウス大腸において自然免疫細胞である好酸球特異的にP2ry14が高発現していることを見出した。そこで、DSSを投与したP2ry14欠損マウスに、野生型マウスおよびP2ry14欠損マウスの骨髄から回収した好酸球を腹腔内投与し、DSS誘導性大腸炎の重症度を解析した。その結果、野生型マウス由来の好酸球を移入したP2ry14欠損マウスにおいて大腸炎の重症化が示された。さらに、P2ry14欠損マウスの大腸好酸球に比べ、野生型マウスの大腸好酸球では、UDP-glucose刺激後、MAPKシグナル経路およびErkシグナル経路の活性化を伴うケモカイン/サイトカインの産生亢進が起こることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度実施研究では、P2ry14欠損マウスを用いた解析により、UDP-glucose-P2Y14受容体シグナルが腸管炎症を重症化させること、また標的細胞が好酸球であることを明らかにした。さらに、ヒト大腸癌患者由来正常大腸検体と潰瘍性大腸炎患者由来大腸検体を用いた解析から、潰瘍性大腸炎発症時の大腸組織ではP2Y14受容体の発現が亢進することを見出した。これらの結果から、ヒト腸管組織においてもがUDP-glucose-P2Y14受容体シグナルが炎症惹起や大腸炎増悪に関与することが示唆され、P2Y14受容体シグナル経路が潰瘍性大腸炎の治療標的となる可能性を示した。

今後の研究の推進方策

マウス大腸組織において好酸球におけるUDP-glucose-P2Y14受容体シグナル活性化が腸管炎症の重症化に関与することが明らかになったことから、次年度では、潰瘍性大腸炎患者および大腸癌患者の大腸好酸球の活性度合いを比較する。さらに、ヒト大腸好酸球におけるUDP-glucose-P2Y14受容体経路の下流シグナルの同定を行うとともにサイトカイン/ケモカイン産生についても解析を行う。また、マウスおよびヒト好酸球においてP2Y14受容体の発現を誘導する大腸環境因子の同定を行う。さらに、大腸組織におけるUDP-glucose産生細胞(免疫細胞、非血球系細胞、細菌など)を明らかにする。

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi