液性免疫記憶の中心は、記憶B細胞が抗体産生細胞へ分化し高親和性抗体を産生してウイルス・病原体を無毒化することであり、記憶B細胞産生メカニズムの理解は有効なワクチン開発のためにも必須である。本研究では胚中心B細胞集団から記憶B細胞分化を導くメカニズムを明らかにすることを目的として、胚中心B細胞のB細胞受容体(BCR)発現量の差が記憶B細胞分化に及ぼす影響について解析を行った。 前年度までで、NPハプテン特異的胚中心明領域B細胞と、記憶B前駆細胞シングルセル由来のBCR遺伝子を取得し、マウスprimary B細胞の免疫グロブリン遺伝子座にCRISPR/Cas9を用いてノックインする実験系を確立した。今年度は、養子移入実験により目的のBCRノックインB細胞のin vivoにおける分化過程を解析した。 その結果、B細胞表面BCR発現量の差が記憶B細胞分化に影響を与えることを示唆するデータが得られ、本研究仮説を支持するものであったが、同時にノックインB細胞のin vivoでの応答自体が非常に弱く、実験系のさらなる改良が必要であることも明らかとなった。
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