研究課題
免疫細胞の分裂増殖は、抗原特異的なクローンを増幅するだけでなく分化方向の決定とも連動することが知られており、免疫応答の特性を決定する重要な要素である。抗原に反応したリンパ球が適切に細胞分裂を開始し、適切なタイミングで分裂停止するメカニズムの一つとしてポリコーム抑制複合体PRC2を構成するEed遺伝子を候補として見出した。PRC2複合体はヒストンメチルトランスフェラーゼ活性をもち、主にヒストンH3K27をメチル化する酵素であり、サイレンシングされるゲノム領域の標的化にEedが必要である。Eed遺伝子をT細胞特異的に欠損させたマウスを作成したところ、NKT細胞の胸腺分化が完全に阻害されることを見出し、分化停止の詳細なステージと分化障害が細胞死によって引き起こされていることを特定した。その分子機序として、Zbtb16, Cdkn1a, Cdkn2aの3つの遺伝子の発現異常が原因となっていることを明らかにできた。それらの機序が肝細胞死を抑制するという重要な知見を得た。またEed遺伝子を胚中心B細胞特異的に欠損させたマウスを作成したところ、抗体の親和性成熟に重要な胚中心B細胞が分化開始の初期段階(反応開始から4-5日目)で停止することを見出した。その原因を探索した結果、胚中心反応に重要な複数の遺伝子発現が著しく抑制されていることを特定した。一方、がん遺伝子発現で誘導されるB細胞リンパ腫の発生過程で顕著に発現抑制される遺伝子として特定したCdkn2a産物Arfのがん発症における役割について、B細胞リンパ腫マウスモデルとのノックアウトマウスを作成して解析を行った結果、B細胞がん化はArf単独の抑制のみで引き起こしうるわけではないという重要な結論を得ることができた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 15件、 招待講演 1件)
Science Immunology
巻: 9 ページ: eadi0042
10.1126/sciimmunol.adi0042
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 120 ページ: e2219439120
10.1073/pnas.2219439120
Experimental Gerontology
巻: 174 ページ: 112130-112130
10.1016/j.exger.2023.112130
International Immunology
巻: 35 ページ: 197~207
10.1093/intimm/dxac055
Communications Biology
巻: 6 ページ: 395
10.1038/s42003-023-04782-6
Cancers
巻: 15 ページ: 2889~2889
10.3390/cancers15112889
Genes to Cells
巻: 28 ページ: 411~421
10.1111/gtc.13022