年齢を重ねるごとに免疫機能が低下していく免疫老化は、感染症の重症化や免疫寛容維持機構の破綻による自己免疫疾患発症に密接に関係するが、それら現象を 支えるメカニズムは未解明である。特に、液性免疫の要となるB細胞に関する知見は非常に乏しい。そこで本研究では、トランスクリプトーム解析と分子・細胞・ 個体レベルの機能解析により、B細胞の加齢に伴う多様性変化と免疫老化誘導の鍵となるB細胞サブタイプの同定を試みる。さらに、同定したB細胞サブタイプの機 能と活性化機序を解明し、液性免疫機能低下と自己免疫疾患病態への関与を明らかにすることを試みる。本研究では、網羅的トランスクリプトーム解析により、 加齢依存的に変化するB細胞サブタイプの同定と機能解析を行い、免疫老化に関わるB細胞サブタイプ変動の意義を明らかにする。 今年度は、CD11+加齢性B細胞で発現が高い遺伝子のうちFcrl5に焦点を当てた。Fcrl5のB細胞特異的トランスジェニックマウス(Fcrl5-BTg)の解析を行なった。その結果、Fcrl5-BTgマウスが老化により自己免疫疾患を自然発症することがわかった。さらに、イミキモド誘導性のSLE様の自己免疫疾患が野生型に比べて病態が増悪することも観察された。メカニズムとして、HEL/sHELのB細胞アナジーモデルを用いることで、Fcrl5の発言上昇がアナジー破綻を誘発することが判明した。本来、アナジーB細胞ではFcrl5が発現が低レベルであることを考えると、異常なFcrl5発現上昇がB細胞免疫寛容の異常を引き起こし、自己免疫疾患発症に関わると考えられる。
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