研究課題
免疫システムが適切に機能するためには、免疫細胞が各種刺激に反応し、適切に細胞内エネルギー代謝を変化させる必要がある。このような免疫機能と代謝との関係は「免疫メタボリズム」として免疫学の新潮流の一つになっている。これまでの免疫メタボリズムに関する研究では、サイトカインやシグナル分子など生体内因子による制御が中心であった。これに対し本研究グループは、食事成分や腸内細菌に着目した研究から、免疫メタボリズムは食事成分や腸内細菌などの外的因子とも密接に関係していることを明らかにしてきた。さらには、宿主細胞や腸内細菌による代謝により、食品成分を材料に産生される代謝物に、免疫制御機能があることも分かってきた。本研究では、このような独創的な研究基盤を活用し、未だ多くが解明されていないアレルギー・炎症性疾患に関わる細胞群に焦点を当て、免疫メタボリズムと外的因子、各種代謝物との関連を明らかにすることを目的とする。本年度は、炎症に関わる主要免疫細胞の一つであるマクロファージに焦点をあて、従来言われていたM1、M2マクロファージだけではなく、その他の刺激により誘導される新しいマクロファージサブセットを同定し、機能解析に着手した。またマクロファージの炎症に関わる機能を制御する脂質代謝物を同定し、受容体や作用メカニズム、さらには病態モデルにおける抗炎症効果などを明らかにした。これらはマクロファージの多様性、ならびにその機能を制御する物質の同定など、生体防御や生体恒常性維持機構の解明につながる有用な知見となる。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画の通り、炎症に関わる免疫細胞に焦点を当て、免疫機能とエネルギー代謝との関係について解析を行った。特に本年度はマクロファージに着目した研究を遂行し、従来言われていたM1、M2マクロファージだけではなく、その他の刺激により誘導される新しいマクロファージサブセットを同定し、細胞表面マーカーの発現の特殊性やエネルギー代謝に関する予備検討結果を得ている。さらに、免疫機能を制御する脂質代謝物を同定し、受容体など抗炎症作用を発揮するメカニズムを明らかにした。このように、本年度の成果は、マクロファージが周辺環境により多彩な免疫機能を示すように変化し、さらに、それに付随してエネルギー代謝が変化することを明らかにすると共に、それらの機能が制御可能な代謝物と作用メカニズムを解明できたことから、研究は予定通り進捗していると考えられる。
今年度の検討から、マクロファージは周辺から受け取る刺激により、免疫機能やエネルギー代謝が変化することが明らかになったことから、次年度以降は生体防御や炎症などに関わるより機能的な性質の解析やエネルギー代謝との関連、さらにはそれらの機能維持におけるエネルギー代謝の重要性を確認する。さらには、免疫制御を可能とする物質のエネルギー代謝における役割の解析も進める。これらの解析によって、マクロファージの多様性について、免疫機能とエネルギー代謝という観点からの分子生物学的メカニズムを明らかにしたいと考えている。さらには得られた知見を基盤に、マクロファージ以外の免疫細胞にも解析を展開し、細胞の種類に依らない普遍性と、細胞毎に異なる多様性という両方の観点から知見を得たいと考える。
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