研究実績の概要 |
細胞競合は、適応度の高い細胞と低い細胞が共存した際に、異なる細胞の境界で生じる作用によって、適応度の高い細胞が勝者として生き残り、適応度の低い細胞が敗者として組織から排除されるという機構のことである。最近では、哺乳類の胸腺や腸管などの上皮組織においても、細胞競合による組織恒常性維持機構に抗腫瘍作用があることが明らかにされつつある。そのため、細胞競合には、『免疫細胞を介さない抗腫瘍効果を持つ組織恒常性維持機構』としての役割があり、新たな癌根治療法開発への期待から、世界中から注目を集めており、その機構解明が求められつつある。我々は、ヘミデスモソーム構成因子であるCOL17A1を介した幹細胞競合が皮膚の恒常性維持と老化を司ることを世界に先駆けて明らかにした(Liu#, Matsumura#* et al., Nature 2019, #equally contribution, *corresponding author)。しかしながら、皮膚癌の初期段階において、細胞競合の破綻が皮膚癌の惹起に関与するのか否かという最も重要な課題については、全く明らかにできていない。そこで、本研究では、表皮基底細胞がどのようにして細胞競合を引き起こしながら、最終的に排除されずに癌発生に至るのか、癌化における幹細胞競合の役割を解明し、細胞競合を軸とした癌抑制の新規治療法開発に繋げることを目的とした。本年度では、ヒト角化細胞の3D培養モデルを用いて、細胞競合が起こるか否か実験系の構築を行い、様々な遺伝子改変細胞株を用いて細胞競合の検証を行ってきた。その結果、細胞競合の実験系の構築に成功してきている。
|