研究課題
本研究では腫瘍微小環境における鉄代謝と腫瘍進展の関係性を理解することをめざし、本年度も腫瘍微小環境における鉄代謝動態の俯瞰、がん細胞および免疫細胞における鉄代謝の変容と腫瘍進展の関連解析について、それぞれ研究を進めた。ヒト肺がんの進展における鉄の役割には二面性があり、鉄の蓄積が肺がん進展を予防するという報告や、逆に、肺がんの進展を促進するという報告が混在している。そこで、肺がんの進展における鉄の役割の詳細を調べるため、鉄代謝制御に重要なFBXL5およびIRP2遺伝子を欠損させた肺がん細胞を用いて研究を進めた。その結果、FBXL5の欠損により細胞内の2価鉄を過剰にした場合はがん細胞の増殖が抑制されるのに対し、IRP2の欠損による3価鉄過剰はがん細胞の増殖に影響を与えないことを見出した。このメカニズムとして、肺がん細胞における2価鉄の過剰が、細胞周期抑制因子p27の蓄積を介して細胞周期のG1期からS期への進行を遅延させることを明らかにした。このため、FBXL5とp27の両方を欠損する肺がん細胞では、2価鉄の蓄積による肺がん細胞の増殖抑制が緩和された。また、マウスに移植した肺がん細胞も同様に鉄代謝の変容により腫瘍増殖が抑制されることがわかり、蓄積する鉄の価数が、鉄のがん進展殖への影響を理解する上で重要であることを明らかにした。以上の研究成果をふまえ、鉄代謝と炎症応答および腫瘍進展の関係性について学会発表、論文発表を行なった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Cancer Science
巻: 114 ページ: 4355~4364
10.1111/cas.15949