研究課題/領域番号 |
21H02766
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
永野 修 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (30404346)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小細胞肺癌 / xCT / フェロトーシス |
研究実績の概要 |
近年、申請者らは治療抵抗性を獲得した小細胞肺癌(SCLC)細胞は、シスチン輸送体サブユニットであるタンパク質xCTが高発現となり、スフェア形成能や造腫瘍能といった癌幹細胞様の性質を獲得するようになることや、オートファジー制御因子p62/SQSTM1がxCT発現に関与していることを新たに見出した。当該研究ではSCLCの悪性化に関わるp62/SQSTM1およびxCTの機能的役割を明らかにするため研究を実施した。① xCT発現が癌幹細胞性に与える影響の解析:まず、SCLCにおいてxCT発現に関わるオートファジー関連分子(p62/SQSTM1およびATG7)をCRISPR/CAS9システムを用いてノックアウトした細胞(WT、ATG7、ATG7/p62KO細胞)を作成した。これらの細胞を用いてRNAseq解析を実施し、オートファジー不全遺伝子セットを作成した。その結果、オートファジー不全の遺伝子プロファイルは、SCLCのうち抗癌剤抵抗性サブタイプであるSCLC-I(Inflamed)に濃縮されていることが分かった。このことから抗癌剤抵抗性を獲得したxCT高発現のSCLC細胞ではオートファジー不全となり、抗酸化能が亢進していることが示唆された。② p62/SQSTM1を介したxCTの発現制御機構: p62/SQSTM1を介したxCTの発現制御機構を検討した結果、オートファジー不全によって蓄積したp62/SQSTM1はxCTと直接結合し、安定化することが明らかとなった。③ 新規SCLCマウスモデルとxCT標的治療の開発: RPMマウス(Rb1fl/fl Trp53fl/fl MycLSL/LSLマウス)から作成したSCLC腫瘍オルガノイドにp62/SQSTM1を発現させた腫瘍オルガノイドを作成し、治療抵抗性SCLCであるSCLC-Iサブタイプの新規マウスモデルの開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SCLC細胞株から作成したオートファジー不全の遺伝子プロファイルをヒトSCLCのRNAseqデータと比較することで、オートファジー不全に伴って変化する遺伝子群は、とくに抗癌剤抵抗性サブタイプであるSCLC-I(Inflamed)に濃縮されることを明らかにすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後、SCLCの治療抵抗性の要因であるとと考えられるxCT発現を促進するオートファジー不全がどのように引き起されているかを明らかとするとともに、新規SCLC-Iマウスモデルを作成する。さらにこのマウスモデルを用いてフェロトーシス誘導剤およびオートファジー誘導剤の効果を明らかにするとともに非臨床POCの取得を目指す。
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