研究課題/領域番号 |
21H02773
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
牛島 俊和 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90232818)
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研究分担者 |
山下 聡 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (80321876)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エピゲノム / 合成致死 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
遺伝子機能欠失を利用した創薬のために合成致死が注目されているが、利用可能な突然変異が少ないためにこれまでの成功例は限られる。研究代表者は、従来、DNAメチル化異常は突然変異に比べて非常に多く存在することを見いだしており、研究開始前までに、FAT4遺伝子のDNAメチル化異常がβ-catenin阻害と合成致死である可能性も見いだした。本研究では、新たなDNAメチル化合成致死を着実に得ると同時に、合成致死の全く新しい起点となるエピゲノム異常を解明する。 1年目の本年度は、メチル化合成致死の起点DNAメチル化と標的遺伝子の選別基準(相関係数、生存や致死への影響の程度等)の最適化を行い、メチル化合成致死の新規組み合わせの探索を行った。プロモーターCpGアイランドを持つ8,101遺伝子から、i) 50症例の胃がん手術検体のうち20%以上でメチル化が認められ、ii) 検体に含まれるほとんどのがん細胞にメチル化が存在(がん細胞含有率補正後のメチル化レベルが90%以上)し、iii) 正常な胃で発現が認められるものとして、137遺伝子を単離した。これらのうちメチル化されている細胞株では発現が全く認められず、非メチル化の細胞株では発現が認められるものとして10遺伝子を同定した。これらの候補遺伝子に対して、メチル化されている場合に特異的に致死性を発揮する標的遺伝子の探索をdepmap (the Cancer Dependency Map)データベースを用いて行った。その結果、起点遺伝子PRKACBと標的遺伝子CDK6の組み合わせを同定した。同様に、大腸がんにおいても探索を行ない、起点遺伝子FERMT2と標的遺伝子FERMT1の組み合わせを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた起点DNAメチル化と標的遺伝子の選別基準(相関係数、生存や致死への影響の程度等)の最適化を完了し、新規メチル化合成致死の組み合わせを複数同定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
同定した起点サイレンシング遺伝子がメチル化された胃がん細胞株とされていない胃がん細胞株を用いて、候補標的遺伝子の阻害を行い、合成致死の確認を行う。メチル化合成致死の可能性が認められた場合、起点遺伝子・標的遺伝子とも正常ながん細胞株を用いて起点遺伝子をノックアウトする。起点遺伝子ノックアウトにより、標的遺伝子阻害効果が増強されるかどうかを明らかにする。 また、標的遺伝子が酵素や膜タンパクなど創薬標的に適する遺伝子である場合は、阻害剤スクリーニングの準備を開始する。
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