研究課題/領域番号 |
21H02779
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 暁 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (40562715)
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研究分担者 |
田中 十志也 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任教授 (20396930)
坂田 樹理 東北大学, 薬学研究科, 助教 (20772700)
巽 俊文 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特別研究員 (80868232)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | VHH / duocarmyucin / affibody / antibody mimetics / single domain antibody / nanobody / Cupid / Psyche |
研究実績の概要 |
再発や転移を伴い体内に広がった進行がんに対する副作用の少ない治療薬開発は、 がん研究における最大の目標である。がん細胞は複数の変 異をもった細胞が 集まっており、 複合的な標的に最適な作用機序をもつ治療薬を届ける基本技術が必要である。本研究では、高殺細胞活性を目的部位まで運び、その目的部位で活 性化する薬物送達系の最適化を行い高い治療指数(therapeutic index)を達 成し、その効果を複数のがんへ適応する ことを目的とする。これにより希少がんや従 来根治が困難と考えられてきた進行がんに対して高い治 療効果を少ない副作用を両立した治療法を確立することである。 2021年度は、低免疫原性、ビオチン非結合性を有する改変ストレプトアビジン (Cupid)に affibody (ZHER2:342, ZEGFR, ZHER3など) を融合したaffibody-Cupid分子を大腸菌のインクルージョンボディーからがん細胞ターゲティングタンパク質を 合成する方法を確立した。光増感剤ペイロード(Psyche Ax-SiPc)を用い、in vivo での腫瘍縮小効果を確認し2022年度に論文化した。2022年度は、重鎖抗体 (VHH)をCupidに融合したVHH-Cupidを大腸菌インクルージョンボディーから製造する方法を確立した。VHHは抗HER2、CEAなどを用いた。また同時に開発を進めていた、抗がん剤のデュオカルマイシンをペイロードとしカテプシンB切断型リンカーでPsycheと結合した Psyche-duocarmycin の開発に成功した。抗HER2 VHH-CupidとPsyche-duocarmycin とを組み合わせHER2陽性のKPL-4乳がん細胞株を使用し in vivo での腫瘍縮小効果の確認を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、重鎖抗体 (VHH) を改変ストレプトアビジン(Cupid)に融合したVHH-Cupidの大腸菌インクルージョンボディーから製造方法の確立を行なった。VHHはアミノ酸配列が公開されている、抗HER2、CEAを用いた。また同時に開発を進めていた、抗がん剤のデュオカルマイシンをペイロードとしカテプシンB切断型リンカーでビオチン改変体(Psyche)と結合した Psyche-duocarmycin の開発に成功した。 次に、抗HER2 VHH-CupidとPsyche-duocarmycin とを組み合わせHER2陽性のKPL-4乳がん細胞株を使用し in vitro での細胞傷害性のアッセイ系を樹立した。また、モデルマスを用いた in vivo での腫瘍縮小効果の実験系の確立を行なった。動物実験では、薬剤200マイクログラム投与1回では30日後あたりから再発が見られるのに対し、薬剤200マイクログラム投与を2回、間隔2週間で投与したマウスの腫瘍が寛解することを病理解析を行なって確認をした。光増感剤とは別の機序をもつ、抗がん剤デュオカルマイシンのペイロードの効果を新たなターゲティング剤で実証できている、このことから本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1)新規ペイロードの設計・合成と効果の検証: がん細胞への細胞殺傷効果の検証を進めてきた、Ax-SiPc(光増感剤)、デュオカルマイシン(抗がん剤、DNAアルキル化剤)に加えて、新規ペイロードとして、ヤタケマイシン(抗がん剤、DNAアルキル化剤)を結合したビオチン改変体(Psyche)化合物の設計と合成を進める。また、合成された化合物の効果を in vitro、in vivoで検証を進める。 2)既存VHH配列を用いたターゲティング剤の合成: 抗HER2 VHH に加えて、既知となっているEGFR、HER3やCLDN18.2に対するVHHの配列を使用し、改変ストレプトアビジン(Cupid)との融合タンパクの製造方法確立し、各種ペイロードを組み合わせ in vitro、in vivoでの効果の検証を進める。 3)Psyche-duocarmycin を用いた系の毒性評価: 抗HER2 VHH-CupidとPsyche-duocarmycin の毒性評価を進める。
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