研究課題/領域番号 |
21H02785
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷口 智憲 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (40424163)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ERストレス |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1/PD-L1抗体)は、様々ながん種で明らかな臨床効果を示したが、単独使用では効果不十分で、不応例に対する併用療法の開発と、奏効例を選別するバイオマーカーの探索が必要である。これまでの研究で、研究代表者は、不応例の原因となる免疫抑制機構に脂質代謝異常が関与することを見出した。さらに、そのメカニズムの一つとして、ER(小胞体)ストレスが関与し、それは加齢による影響を受けている可能性が示唆された。本研究では、マウスモデルを用いた実験的解析とヒト臨床検体の解析により、担癌生体の免疫細胞におけるERストレスの原因と、それが抗腫瘍免疫応答に及ぼす結果を、脂質代謝や加齢の要素を加味し解析する。そして、その知見に基づいた、ERストレスを標的としたがん免疫治療法の改良法、バイオマーカーの開発を行うことを目的とする。 本年度は、癌微小環境において、免疫細胞がERストレスを受ける原因として、脂肪酸代謝が関与しているメカニズムを明らかにした。脂肪酸飽和に関与する酵素の阻害薬は、T細胞のERストレスを軽減できる事が明らかとなった。また、本酵素のノックアウトマウスでも、T細胞のERストレスが、野生型と比べて低下している事が分かった。さらに、この阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用は、相乗的な抗腫瘍効果を示す事が明らかとなった。 さらに、腫瘍細胞で発現が低下することで、周囲の細胞のERストレスを増加させる可能性のある酵素を発見し、その酵素の強制発現やアゴニストによって、抗腫瘍効果が増強できる可能性かわかった。また、ERストレスに関与するタンパクに結合し、そのタンパク機能及びT細胞機能を増強させる可能性のある物質を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、免疫細胞がERストレスを受ける原因として、脂肪酸代謝が関与している事を明らかにした。脂肪酸飽和に関与する酵素の阻害薬は、T細胞のERストレスを軽減でき、さらに、免疫チェックポイント阻害薬の併用は、相乗的な抗腫瘍効果を示す事が明らかとなった。これらの発見に関しては、現在、英文論文の投稿準備を行っている。 さらに、腫瘍細胞で発現が低下することで、周囲の細胞のERストレスを増加させる可能性のある酵素の発見や、ERストレスに関与するタンパクに結合し、その機能を増強させる可能性のある物質の発見などを行う事が出来た。これらの結果より、当初の仮説通り、ERストレスが、抗腫瘍免疫応答に影響を及ぼしている事が示せていると考えられ、概ね計画通り研究が進んでいると考えている。 また、ヒト臨床検体や、マウスモデルにおいて、免疫細胞でのERストレスの実態を解析するために、一細胞RNAシーケンスの条件検討をおこない、これも順調にすすみ、次年度以降に、解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
癌微小環境において、免疫細胞がERストレスを受ける原因の解析を行う。具体的には、本年度に同定された、免疫細胞でERストレスが誘導される原因について、さらにメカニズムを解析する。さらに、免疫細胞のERストレスが、抗腫瘍免疫応答に与える結果を解析も行う。具体的には、本年度までに、T細胞へのERストレスの影響が明らかとなり、さらに解析をすすめる。また、他の抗腫瘍免疫応答に関わる免疫細胞の機能変化とその機序を解析する。これらの実験と同時に、ヒト腫瘍組織中の免疫細胞における、ERストレスの実態を評価する。ヒトやマウス腫瘍組織内の免疫細胞でのERストレスの実態を解析する。本年度行った一細胞RNAシーケンスを引き続き行い解析する。また、加齢による、免疫細胞のERストレスと抗腫瘍免疫応答への影響を解析も行っていく。マウスモデルを用いて、ERストレスを標的とした治療法の効果を、加齢マウスと若齢マウスで比較する。
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