研究課題
PD-(L)1阻害療法をはじめとした、がん免疫療法の安全かつ効果的な実装において、自己免疫疾患様の免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events; irAE)は解決すべき問題である。この発症、重症化のメカニズムを明らかにすることを目指す本課題において、研究代表者はPD-1阻害療法を受けた担がん老齢マウスがirAE様症状を呈することを見出し、これをirAE実験モデルとして活用し、2023年度はその免疫応答の解析を行なった。この解析にて、PD-(L)1阻害療法を受けた老齢マウスの肺傷害がCD4T細胞の除去により改善されるという結果を得たため、肺へ浸潤するCD4T細胞がirAE様症状の誘導に重要な役割を担うと考え、浸潤CD4T細胞の詳細な解析を行なった。その結果、特徴的な形質を示すCD4T細胞が老齢担がんマウスの肺に誘導されることを突き止め、これらがヒトirAE発症を予測するためのバイオマーカー候補になり得ると考えた。これらの知見を手がかりに、PD-1阻害療法を受けたがん患者検体を用いて標的CD4T細胞の頻度を評価したところ、irAE、特にPD-1阻害療法に伴い肺炎症状を呈する患者で当該標的CD4T細胞の増加が観察された。このことから当該標的CD4T細胞の増加が、irAE発症の予測、鑑別を可能にするバイオマーカーとして応用できる可能性が示唆された。一方、当該標的CD4T細胞の増加は必ずしもPD-1阻害療法の抗腫瘍効果と相関しなかった。つまり、これは抗腫瘍免疫応答を抑制しないirAE症状改善方法の有力な候補と考えられた。今後は、この成果をがんを攻撃する免疫応答の増強と、irAE症状を軽減、改善するマネジメント戦略の両立へと実装することを目指し、さらなる研究を進める予定であるとともに、成果の公表を目指す。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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