研究実績の概要 |
ドラッグデリバリーシステムと放射線照射を融合した核医学治療は、新しい放射線治療である。本研究課題では、がん幹細胞に加えがん細胞にも発現しているCD44に着目し、がん幹細胞を含めた統合的がん治療を目的にした新規アルファ線核医学治療の開発を目指す。 R4年度は、腫瘍集積の改善を期待し、新たに2種類のDOTA-CD44結合ペプチド(DOTA-RP-1、DOTA-P7)の合成に着手した。ペプチドの合成は昨年度と同様に、Fmoc-固相合成法で行った。固相合成の樹脂としてCLEAR-Amide Resinを用い、アミノ酸 (Fmoc-AA-OH) のカップリングには1-hydroxybenzotriazole (HOBT), N,N’-diisopropylcarbodiimide (DIPCI) を用いた。またDOTAのカップリングに関しては、 tri-t-butyl 1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetate/HOBT/DIPCI で行った。 N-末端まで縮合後、樹脂からの切り出し及びアミノ酸側鎖の脱保護は、トリフルオロ酢酸を主成分とする試薬で行い、HPLCで精製後、MALDI-TOF-MS で分子量を確認することにより目的のペプチドが合成されていることを確認した。得られたペプチドを111Inで標識し、マウスにおける体内分布を調べた。その結果、111In-DOTA-RP-1及び111In-DOTA-P7は昨年度のペプチドに比べ腫瘍への高い集積を示した。一方、一般的な放射性ペプチドにみられるように、腎臓への高集積が観察された。また、血液クリアランスは遅く、投与4時間後においても4%ID/g以上が残存していた。
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