研究課題
本研究では、脊髄損傷からの回復過程において、損傷反対側の運動前野から損傷同側の運動前野への経路が機能回復に及ぼす影響を調べる。個体差も検討するために2頭のサルを用いる。昨年度では、1頭のサルで半球間経路が機能回復の早期に大きく貢献することを直接的に明らかにすることができた。今年度は2頭目でも同様の実験を行い、個体差がないかを検討する。課題を十分にこなせるようになったら、左右の運動前野に異なるウイルスベクター注入実験と、両側の運動関連領域にECoGの慢性留置を行い、半球間経路を一方向性に遮断できるようにした。DREADDアゴニストであるDCZ(Deschloroclozap ine)を投与し、Granger因果性を用いて半球間の結合性を調べた結果、一方向性に結合性が低下することが明らかになった。その後、脊髄損傷を作成し、損傷から4ヶ月に亘って精密把持課題によるリハビリテーションを行い、手指の巧緻性の回復経過と脳活動を記録した。精密把持課題ができ始める回復早期にDCZを投与すると、精密把持の成功率が著しく低下した。一方、回復後期になるとDCZを投与しても成功率や精密把持運動に影響は見られなかった。以上の結果から、2頭目のサルでも半球間経路が機能回復の早期に大きく貢献することを直接的に明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度では2頭目のサルを用いて実験を行い、2頭目のサルでも半球間経路が機能回復の早期に大きく貢献することを直接的に明らかにすることができた。
選択的回路操作によって半球間経路が機能回復の早期に大きく貢献することを直接的に明らかにすることができた。今後は回路操作中の脳活動の変化や各脳領域の結合性の変化を明らかにする。
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