研究課題/領域番号 |
21H02799
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
橘 吉寿 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (50373197)
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研究分担者 |
金田 勝幸 金沢大学, 薬学系, 教授 (30421366)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コカイン / ドーパミン / 側坐核 / 淡蒼球 / 視床下核 / 腹側被蓋野 / マウス / 依存症 |
研究実績の概要 |
昨今、各種報道において、「依存症」という言葉を目にしない日は無い。なかでも、薬物依存は精神と肉体を蝕み、自己のみならず家族をも不幸に巻き込む由々しき問題であり、社会的関心は非常に高い。しかしながら、薬物依存症の病態解明は今だ十分でない。薬物の本質は、脳が如何に喜びを感じ、その状況に耽溺するかにあると考えられる。他方、これまでの先行研究から、「大脳基底核」が報酬に基づく行動制御に深く関係することが示唆されている。本研究提案では、大脳基底核を中心とする薬物依存に関わる神経回路を考え、覚醒状態のマウスを用い、1)脳深部カルシウムイメージング法により、頭部固定下での薬物依存形成に伴う大脳基底核を中心とする神経回路動態を可視化する、2)その神経回路動態を基に、光遺伝学による人工神経活動操作を行い、薬物探索行動の変容を導くことで、薬物依存症の病態解明と新規治療法の探索に取り組みたいと考える。 本研究で用いる薬物依存モデル動物として、マウスが自分でレバーを引くと、脳室内に一定量の麻薬(コカイン)が自己投与されるモデルを用いる。これまでの先行研究により、コカインは腹側被蓋野の投射先である側坐核や内側前頭前皮質のドーパミン(DA)トランスポーターを阻害し、細胞外DAを増加させることで報酬効果を惹起し、薬物依存に関わると考えられている。しかしながら、コカインが側坐核と内側前頭前皮質どちらの領域に影響を及ぼすか未だ明らかでない。研究初年度においては、遺伝子改変動物の準備と、2光子顕微鏡下にてオペラント行動課題を出来る装置の作製が完了した。また、AAVベクター注入とグリンレンズ埋入により、腹側被蓋野ニューロンの可視化を行うことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「脳深部カルシウムイメージング法により、頭部固定下での薬物依存形成に伴う大脳基底核を中心とする神経回路動態を可視化する」研究計画においては、ヒトの薬物依存を可能な限り再現するため、受動的な薬物注入ではなく、動物が自分の意思に基づいて薬物を摂取するオペラント行動課題の導入に取り組むことに成功した。「光遺伝学による人工神経活動操作を行い、薬物探索行動の変容を導くことで、薬物依存症の病態解明と新規治療法の探索に取り組む」研究計画においては、ウイルスを二重感染させることで、光遺伝学により経路選択的な人工神経活動操作が可能となる系の構築に成功した。以上のことから、初年度としては全体的に研究が順調に進展していると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は当初の予定どおり順調に進展しており、2022年度は前年度にスタートした以下の2つの研究計画を継続する。 (1)AAVベクターの二重感染により内側前頭前皮質もしくは側坐核に投射する腹側被蓋野ニューロンを経路選択的にラベルし、薬物依存形成時の神経活動変化を2光子顕微鏡カルシウムイメージングにより捉える。 (2)経路選択的な光遺伝学により、腹側淡蒼球―腹側被蓋野路を人工神経活動操作することで、薬物探索行動を抑制させることが出来るかどうか検証する。
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