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2021 年度 実績報告書

光学・機械学習が融合したデータ駆動型研究体系による脳回路並列計算様式の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02801
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

揚妻 正和  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主任研究員 (30425607)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード二光子イメージング / population coding / 並列計算 / 前頭前野 / 光遺伝学
研究実績の概要

大脳皮質の中でも前頭前野は、快・不快の情動や外界からの感覚刺激などの様々な情報を並列処理することで、生存に不可欠な判断を可能にする。一方、脳回路は増設可能な電子回路とは異なり、限られた容量を効率的に利用するための「脳独自の並列処理様式」がその機能を支えると推察されるが、技術的制限によりその理解は理論や仮説の提唱に留まってきた。
本課題では、新たな2光子イメージングシステムを開発し、マウス前頭前野の最大数千の神経細胞一つ一つから詳細な活動を記録しながら、複数の情動記憶が並列に形成される行動課題を実施可能にした。得られる学習過程を通じた長期神経活動記録を元に、機械学習によるデータ駆動型の解読と、光遺伝学による精密な因果性の検証により、前頭前野における並列処理の核となる要素を同定し、脳独自の並列処理様式の実態を実証することを目指している。
着目するマウス内側前頭前野(mPFC)は正負両方のvalence(恐怖・報酬など正負両方向の情動)の記憶を制御する。そこで2021年度は、valenceの異なる二つの記憶を同時平行に獲得する課題を行い、それらの記憶がmPFC内部で混線せずに保持される状態を解読した。学習課程を通じた神経細胞集団の活動記録を元に、二つの記憶がmPFC内部でどのように構築され、どのように分別して想起されるかについて調べ、そこからmPFC神経細胞集団が異なる記憶を分別しながら並列に情報処理する機序を明らかにした。特に、共同研究を通じてモデルベースの機械学習を用いた解析法を開発し、mPFCでの並列計算の鍵となる神経細胞集団(アンサンブル)の検出を可能とした。さらに、その検出結果をnoise correlation、グラフ理論などにより数理学的に評価し、脳情報動態の変遷を可視化することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では、機械学習によるデータ駆動型の解読と、光遺伝学による精密な因果性の検証により、前頭前野における並列処理の核となる要素を同定し、脳独自の並列処理様式の実態を証することを目指している。
この中で、特に独創的でかつ本課題の基盤をなす「機械学習によるデータ駆動型の解読」の部分で当初の期待以上の成果と興味深い知見が得られており、さらにその知見はプレプリントとして報告することができた(Agetsuma et al., 2021, bioRxiv)。
従って、概ね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

内側前頭前野(mPFC)は正負両方のvalence(恐怖・報酬など正負両方向の情動)の記憶を制御する。2021年度は、valenceの異なる二つの記憶を同時平行に獲得する課題を行い、それらの記憶がmPFC内部で混線せずに保持される状態を解読し、異なる記憶を分別しながら並列に情報処理する機序を明らかにしてきた。さらにその知見はプレプリントとして報告することができた(Agetsuma et al., 2021, bioRxiv)。
次のステップとしては、これらの成果の論文化を目指していく。
併せて、神経細胞集団による活動パターンの精密な再現の為の光学系・顕微鏡の構築も推進する。SLM(spatial light modulator)と光遺伝学技術を基盤に、神経細胞集団による活動パターンの人工的な再現を推進する。
さらに、もう一つの提案課題(報酬系の学習課題)についても実験系構築を推進し、並列処理におけるその基盤原理の解明をさらに深めていく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] メキシコ国立自治大学(メキシコ)

    • 国名
      メキシコ
    • 外国機関名
      メキシコ国立自治大学
  • [雑誌論文] Activity-dependent organization of prefrontal hub-networks for associative learning and signal transformation2021

    • 著者名/発表者名
      Agetsuma Masakazu、Sato Issei、Tanaka Yasuhiro R、Carrillo-Reid Luis、Kasai Atsushi、Arai Yoshiyuki、Yoshitomo Miki、Inagaki Takashi、Hashimoto Hitoshi、Nabekura Junichi、Nagai Takeharu
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2021.08.31.458461

    • 国際共著
  • [学会発表] Optical and computational dissection of prefrontal neural circuit for fear memory.2021

    • 著者名/発表者名
      Agetsuma M., Sato I., Tanaka Y., Kasai A., Arai Y., Yoshitomo M., Hashimoto H., Nabekura J., Nagai T.:
    • 学会等名
      The 44th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society
    • 国際学会
  • [学会発表] 恐怖記憶生成における前頭前野情報処理と神経回路再編2021

    • 著者名/発表者名
      揚妻正和
    • 学会等名
      第68回 中部日本生理学会

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公開日: 2023-12-25  

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