研究実績の概要 |
本研究では,報酬条件が逆転する事を予期するマウスを用いて、予測に基づく価値を表現する神経細胞の同定を目指している。また、予測に関わる脳領域の神経活動を抑制した際、予測的な行動が抑制されるかどうか調べる事で、予測的価値を行動に変換する神経機構を明らかにすることを目指した。 初年度では予測的な行動を行う頭部拘束マウスを多数供給できる体制を確立した.マウスの予測的行動に対し、強化学習モデルで説明を試みた所、従来の過去の履歴だけに依存するモデルでは、予測的な行動を説明できなかった。そこで予測の成分を含む強化学習モデル(hybrid Q-learning)を新たに作成したところ、従来のモデルよりも高い精度で行動が説明でき、その背後にある価値のダイナミクスが推定できた。 そこで次年度では、予測的行動を行うマウスの前頭皮質神経細胞よりカルシウムイメージングを行い、予測された価値のダイナミクスが現れるか検証した。その結果、予測に基づいた価値計算を行うことを示唆する神経活動が2次運動野の一部、Anterior Lateral Motor (ALM)領域で観測された.また光遺伝学をもちいて課題遂行中にALMを抑制したところ,予測ができずに初心者のように行動する様子が観察された。これらの結果は Hamaguchi et al., PNAS 2022として掲載された。
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