研究課題/領域番号 |
21H02837
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉江 淳 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (50777000)
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研究分担者 |
池内 健 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20372469)
新田 陽平 新潟大学, 脳研究所, 特任助教 (30800429)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / タウオパチー / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
私たちは、遺伝的要因が疾患の発症にどのように影響を与えるかを明らかにするためのアプローチとして、ショウジョウバエを使用した実験モデルを開発しました。具体的には、ショウジョウバエの視神経軸索の変性を観察し、その過程で生じる遺伝的変異の影響を定量化する方法となります。この実験モデルをつかって、MeDUsAと名付けられた機械学習プログラムを開発しました(Nitta et al., Hum. Mol. Genet. 2023)。MeDUsAは、視神経軸索の変性を自動で定量することが可能であり、多数のサンプルを迅速かつ正確に分析することができます。これにより、実験のコストを大幅に削減しつつ、高い再現性と精度でデータを処理することが可能となりました。このプログラムの開発は、神経変性疾患の研究において、遺伝子変異の影響を簡便にかつ広範囲に渡って調査する新たな手法となります。MeDUsAを用いて、タウオパチーと関連するリスク遺伝子の変異についての調査を行いましたが、野生型との間に有意な差が見られる遺伝子変異を特定するには至りませんでした。一方で、MeDUsAを使用して、希少疾患における原因遺伝子の変異を発見し、新しい病態モデルを構築することに成功しました(Itai et al., Sci. Rep. 2023; Yamada et al., Euro. J. Med. Genet. 2023; Nitta et al., eLife preprint review)。これらの成果は疾患の発症機序を理解につながります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子組換え体作製のプロセスにおいて、BSN遺伝子のようなDNA配列が10kb以上の遺伝子組換え体の作製効率が著しく低いことが判明し、その作製方法ををBac DNA調製に使われるEPI300の大腸菌ホストなどに変更し、インジェクションによる遺伝子組換え体の作製をやり直して実施する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
私たちは、タウオパチーの病態メカニズムを解明するための進展をしましたが、今後の研究の推進方策にはいくつかの重要なステップが必要です。まず、タウオパチーゲノムリソースから特定した低頻度のミスセンス変異を持つ潜在的病因遺伝子の機能解析をさらに深めることが求められます。これには、過剰発現だけでなく、遺伝子編集技術を用いて、変異を持つ遺伝子の機能を具体的に検証する実験が必要であると考えています。遺伝子編集により、変異を導入または修正したショウジョウバエのモデルを作製し、その生理的および病理的影響を調べます。また、、MeDUsAプログラムを用いた機械学習解析の精度を向上させることも重要です。現在のプログラムをより高度なアルゴリズムに更新し、さらに多くのデータを取り入れることで、解析の精度を向上させることが期待されます。これにより、微細な変化も捉えることができ、疾患の早期発見や新たな治療標的の特定に繋がる可能性があります。
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