研究課題
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン(PolyQ)病など多くの神経変性疾患では、蛋白質のミスフォールディング・凝集による普遍的な共通の発症分子メカニズムが考えられている。申請者らは、これらの疾患原因蛋白質の生理的な液-液相分離(LLPS)の不均衡が、核小体、ストレス顆粒など非膜性オルガネラの形成の制御破綻を引き起こし、不可逆的な病的蛋白質凝集の引き金になるという仮説を考えている。本研究では、蛋白質自身に関わるシス因子とその環境に関わるトランス因子の両方の視点から、疾患原因蛋白質のLLPS制御機構を明らかにし、その破綻による蛋白質凝集メカニズムを解明することを目的として、以下の研究を行った。1)疾患蛋白質の液滴形成から凝集体形成に至る制御機構の解明PolyQ、TDP-43などの疾患原因蛋白質について、精製蛋白質を用いた試験管内実験系において、LLPSによる液滴形成の条件を検討し、形成過程の詳細を明らかにした。2)疾患蛋白質の細胞内輸送による非膜性オルガネラ形成制御機構の解明培養細胞系を用いて、微小管重合阻害剤やDynein/Dynactin系やKinesin系関連分子のノックダウンなどによる微小管輸送障害によりTDP-43のストレス顆粒形成、凝集体形成に対する影響を検討した。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子組み換えDNA実験及び動物実験の承認を得るまでに時間を要したために、研究計画を変更したが、変更後は予定通り研究計画を完了した。
今後、以下のような研究を進める。1)疾患蛋白質の液滴形成から凝集体形成に至る制御機構の解明試験管内実験系において、LLPSによる液滴形成の条件・形成過程を明らかにしたPolyQ、TDP-43などの疾患原因蛋白質について、蛋白質自身のシス因子としての疾患関連変異やトランス因子としてのRNAや他の結合蛋白質などとの相互作用による液滴形成→凝集過程への影響を明らかにする。2)疾患蛋白質の細胞内輸送による非膜性オルガネラ形成制御機構の解明培養細胞系を用いて、微小管輸送障害によるTDP-43のストレス顆粒形成、凝集体形成に対する影響の詳細を明らかにし、TDP-43のリン酸化、ユビキチン化など凝集体の病的性質を検討する。
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