研究課題/領域番号 |
21H02846
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
橋本 謙二 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (10189483)
|
研究分担者 |
藤田 有子 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 特任助教 (40623591)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アールケタミン / 抗うつ薬 / うつ病 / 予防効果 / レジリエンス / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
麻酔薬ケタミンは、治療抵抗性うつ病患者に対して、即効性の抗うつ効果と希死念慮の低下を示すことから、精神医学領域において注目されている。ケタミンの主の薬理作用は、グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体の拮抗作用であるが、他のNMDA受容体拮抗薬がケタミン様の優れた抗うつ効果を示さないことから、ケタミンの抗うつ効果にNMDA受容体は重要でないかもしれない。この仮説に基づき、NMDA受容体への親和性が低いアールケタミンを発見した。 うつ病のモデル動物の作成に社会的敗北ストレスモデルがあるが、このモデルはうつ様行動だけでなく、大腿骨の骨密度の低下を示す。アールケタミンは、これらのうつ様行動だけでなく、骨密度の低下も改善することを見出し、この作用には腸内細菌や代謝物が関与している可能性を見出し、論文発表した。 一方、ケタミンは半減期が短いにもかかわらず、長期間(1週間以上)にわたり効果を示すことが知られている。昨年度、アールケタミンの長期持続効果に関わる遺伝子として、NFATc4を同定したが、今回NFATc4を制御するmicroRNA-149を同定した。その結果、前頭皮質におけるmicroRNA-149が、アールケタミンの持続効果に関わっていることを見出し、論文発表した。さらに、アールケタミンの長期持続効果に関わる遺伝子として、脾臓に着目して、脾臓のRNA-seq解析を行い、アールケタミンの長期持続効果に関わる新規シグナル系を同定した。 本研究の結果より、新規抗うつ薬アールケタミンはうつ病治療だけでなく、うつ病患者や骨粗しょう症患者の大腿骨の骨密度低下に対して改善作用を示す可能性がある。さらに、アールケタミンの投与は、ストレス等によるうつ病の再発予防にも応用できるであろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画してきたアールケタミンに関する論文を既に発表した
|
今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、アールケタミンの骨密度低下に対する改善作用の作用機序を明らかにするとともに、アールケタミンの長期に持続する予防効果に関わる作用機序を明らかにする。
|