研究課題/領域番号 |
21H02855
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高田 篤 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (90643693)
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研究分担者 |
垣内 千尋 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90342766)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 双極性障害 / 次世代シーケンサー / エクソーム / 体細胞変異 |
研究実績の概要 |
2021年度は、双極性障害患者約200検体のエクソームライブラリ作成およびクオリティチェックを実施した。並行して、1)HaplotypeCaller、Mutect2等を用いた一塩基変異、挿入欠失変異検出パイプラインのパラメタ調整、2)一般集団での変異の頻度、エピゲノム修飾、種間での塩基保存などの情報を付与するためのデータベースのアップデート、3)構造変異を検出するための新規環境構築(GATK-gCNVの導入等)、4)ケースコントロールデータとDe novo変異データとの統合解析のためのextended transmission and de novo association(extTADA)解析パイプラインの実装、5)Telomere-to-Telomere (T2T) consortiumが公開している、より完全なヒトゲノム参照配列を用いた解析が変異検出感度向上に貢献するかどうかの予備的検討、6)ゲノム解析で同定される疾患関連遺伝子・変異の機能解析を行うための細胞実験系の整備、などを実施した。 また関連するプロジェクトとして、家系DNAサンプルのエクソームシーケンス解析による双極性障害を対象とした過去最大規模のde novo変異研究を実施し、生殖細胞系列de novo変異と体細胞de novo変異の双方が疾患リスクに寄与することなどを明らかにした(Nishioka et al., Nature Communications 2021)。この研究では、ヒト死後脳single nucleus RNA-seqデータとゲノムデータを統合し、疾患との関連が示唆される細胞亜集団を特定する手法の確立をあわせて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおよそ当初予定していた検体数のライブラリ作成、クオリティチェックが完了しており、データ取得に進むことができている。シーケンスデータ取得部分については、COVID-19関連のシーケンス解析のニーズが高まったことなども影響し、やや遅れている。解析パイプラインの整備は予定通りに進捗している。今年度に入ってから新たに利用可能となったリソース(より完全なヒトゲノム参照配列など)の利用検討を積極的に進めるなど、当初の計画を超えて進捗している部分もある。 大部分は予定通りに進捗し、一部、やや遅れている部分と当初計画以上に進展している部分がともに存在しているため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、双極性障害患者エクソームシーケンスデータの取得と解析を実施する。最終的なPublishable qualityのケースコントロール解析および他グループからのデータとの統合解析は、全データが出揃ってからJoint variant callを実施し、その結果を元に行う。ただし、中途段階で、罹患群データと健常対照群データや理論値との比較について予備的解析を実施し、稀な変異検出精度向上を目指す。あわせて、ゲノム解析で同定される疾患関連遺伝子・変異の機能解析を行うための細胞実験系を構築する。また、大きな効果量をもって疾患と確実に関連する遺伝子・変異が同定された場合には、それらの変異保有者の詳細な臨床表現型の情報収集を、適切な倫理的配慮を行った上で実施する。
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