研究実績の概要 |
2023年度は取得したエクソームデータを用いた生殖細胞系列変異および体細胞変異コール、アノテーション付与等を実施した。その後にケースコントロール比較を行い、双極症と関連する変異タイプ、分子パスウェイ、遺伝子等の検討を行なった。 体細胞変異の解析では、生殖細胞系列変異が神経発達症や自閉スペクトラム症の原因となることが知られている遺伝子中の有害な体細胞変異が、双極症群で有意にエンリッチしていることを認め、以前の研究での結果(Nishioka et al., Nature Communications 2021)をより信頼度が高い形で再現した。さらに、ミトコンドリアDNAにコードされるtRNAのヘテロプラスミー変異が罹患群で多いことを新たに見出し、これらの知見を共同研究の成果として報告した(Nishioka et al., Molecular Psychiatry 2023)。 生殖細胞系列変異については、取得したデータを解析したところ、統合失調症や神経発達症の原因遺伝子として知られているSETD1Aの機能喪失変異を、精神病性の特徴や知的障害を伴わない双極症患者が保有していることを発見した。SETD1Aと双極症の関連についてさらに検証するために、BipExデータとのメタ解析を実施し、SETD1Aの機能喪失変異は双極症と有意に関連することを認めた(Hara et al., Psychiatry and Clinical Neurosciences, accepted)。また、得られた結果に基づいた治療法探索・検証を実施した。 その他、患者群で同定した変異の機能解析をiPS細胞を用いて実施し(Nakamura, Ueda, Mizuno et al., Cell Genomics 2024)、またリピート変異についても解析パイプラインの確立と一次データの取得を行った。
|