研究課題
Ikf3 N159Sマウス(ヒトIKZF3 N160S異常に対応)において、胸腺、リンパ節、脾臓、パイエル板などの表現型解析、mRNA発現解析等を行った。その結果ホーミング受容体の発現減弱や、パイエル板におけるリンパ球減少等が認められ、骨髄移植実験では、変異を有する造血幹細胞では、末梢のリンパ組織の再構成が貧弱であることが判明した。さらにdouble KIマウスなども作成し、それぞれの変異の意義づけを明らかにしつつある(論文準備中)。重症IKZF1異常症(DN変異)であるIKZF1 N159Sのマウスモデル(Ikzf1 N159S)も作成し、解析を加えたところ、本変異では造血幹細胞レベルでの障害が認められ、更にNK細胞、骨髄球系細胞、リンパ球の減少や、ホーミング受容体の発現異常やB細胞における機能分子の発現減弱が認められた。これらからIkzf1 N159S, Ikzf3 N159Sには共通する分子機構がある可能性が示唆された。さらに目標としているIKZF1ホモダイマー、IKZF3ホモダイマー、IKZF1/IKZF3ヘテロダイマーの機能分担についても、split GFP及びsplit AirIDタグをつけたIKZF1, IKZF3をIKZF1/2 double KO NALM6細胞に導入して、IKZF1, IKZF3のそれぞれのホモダイマー、ヘテロダイマーを可視化する実験に着手している。現在は、バックグラウンドを減弱させるなど、システムの最適化について取り組んでいるところである。それぞれの転写調節機能、会合領域について、ChIPseq、RNAseq等を用いて解析する体制が整った。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたHiBiTシステムを利用してIKZF1, IKZF3にそれぞれHA, Ty1のタグ付けを行うシステムから、split GFP及びsplit AirIDタグをつけたIKZF1, IKZF3をIKZF1/2 double KO NALM6細胞に導入してホモダイマー、ヘテロダイマーを可視化する手法(近位依存性ビオチン化酵素によるタンパク質相互作用解析の応用)に転換したが、そのコンストラクトの作成、導入細胞での可視化の可能性、抗体による免疫沈降などについては確認することができたため、翌年度への解析へのステップとなった。モノマー機能については、ZF5, ZF6が欠ける変異を患者で同定しており、同サンプルを用いた解析により、成果をあげる予定である。モデルマウスにおいては、理化学研究所統合生命医科学センターの全面的な協力を得て、様々なモデルマウスを作成することができた。それぞれの特徴的な免疫細胞亜群構成や分子発現解析、competitive bone marrow transplantation assayなどから、機能の相違についての推察が行えるようになった。さらに多くのマウスが樹立することができたため、腫瘍化現象等を観察できる素地ができたものと考えている。特にkappa, lambda usageやレパートア解析では興味深いデータが集まりつつある。またそれぞれから胸腺細胞、リンパ節/脾臓細胞を収集し、mRNA発現解析を行うと共に、ChIP、Cut&RUN解析によって、それぞれの変異転写因子によるneomorphic機能についての解析が始まったところである。さらに成果としては記載していないが、新たなIKZF3異常症を見出すことができており、その解析からも更なるIKZF3分子の機能の理解が深まることが期待される。
最終年度にあたり、進展が認められている領域を中心に解析を進めて取りまとめたいと考えている。まずは作成したIkzf3 G159R, N160Sマウス、それぞれのホモ及びヘテロマウス、G159S/N160Sマウス、Ikzf1 N160Sマウスの時空間的解析、同マウス由来胸腺細胞、preB細胞を用いた転写調節解析から、それぞれの変異がもつ機能について、詳細なデータを収集して、neomorphとは実際にどのような新しい機能なのか、そしてneomorphが表現型とどう関係するのかを明らかにしたい。本年度はIKZF3の新規変異が複数、膠原病コホートで見出された。免疫不全症よりも自己免疫的な要素が強い疾患であり、患者サンプルの解析、モデル細胞の解析から、変異タンパクの機能を明らかにしていきたい。さらに、IKZF3 N159S患者も、海外から紹介を受け、その表現型が私たちの既報とは異なっている(むしろマウスモデルに近い)ことから、さらに疾患発症メカニズムを詰めていきたいと考えている。モノマーの機能についてもZF5, ZF6欠如のホモダイマー形成異常症検体を中心に検討を行いたい。IKZF1ホモダイマー、IKZF3ホモダイマー、IKZF1/IKZF3ヘテロダイマーの機能的差異の検証はsplit GFP及びsplit AirIDタグシステムの円滑な稼働(バックグラウンドの軽減等)にかかっている。未だに転写因子ヘテロダイマー解析での良い成功例がないが、現在までの検討からは局在解析やChIP解析に耐えるようなシステムとなっている。今年度からは、まずモデル細胞を用いての一定の成果をあげ、更なる検討に繋げる予定である。
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