研究課題
本研究の目的は個々の患者の分子病態に立脚した新規治療薬の開発と実用的なin vivo薬剤スクリーンニングが実現可能な難治性神経芽腫患者由来異種移植(PDX)ライブラリーを作成することである。全国の医療機関が参加する日本小児がん研究グループ(JCCG)を母体とした前向き観察研究「神経芽腫患者由来異種移植ライブラリーの構築」を2021年6月より開始した。開始から約2年9ヶ月が経過した時点で、38医療機関が研究に参加し、難治性神経芽腫30症例の新鮮腫瘍組織または骨髄を免疫不全マウスに移植し、うち2つの予後不良なサブグループ群(MYCN増幅、ALK遺伝子異常)の各1例を含む4例でPDXマウスを樹立した。生着した腫瘍は免疫不全マウス内で大量に増幅するとともに、腫瘍細胞の表現型解析及びサブグループの特定を進めている。さらに、小児固形腫瘍観察研究のデータセンターから提供された臨床データを合わせた統合データを作成し、他の研究施設へのPDXマウスの供給体制の整備を進めている。化学療法及びALK阻害剤に治療抵抗性を示した再発神経芽腫症例において、増悪時の生検組織を免疫不全マウスに移植し、マウス内に生着した腫瘍と患者検体の病理検査により、病理学的特徴が維持されていることを確認した。さらに、RNAシーケンスにより初発時・増悪時検体から新規のBEND5-ALK融合遺伝子、全エクソンシーケンスにより増悪時検体からのみFGFR1遺伝子変異を同定した。PDXはALK阻害剤ロレクチニブに治療抵抗性を示し、その耐性獲得にFGFR1遺伝子変異の付加が関与している可能性が高いことを明らかにした。今後は、ALK阻害剤とFGFR阻害剤の併用療法による耐性克服効果の検証や、シングルセルRNAシーケンスによるALK遺伝子異常を有する神経芽腫の治療抵抗性クローンの出現形式の解析を進めて行く予定である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cancer Gene Therapy
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Pediatr Blood Cancer
巻: 70 ページ: e30331
10.1002/pbc.30331