研究課題
モデルマウスを用いて酸化型αディフェンシンの分泌量低下と、質の異常を示す還元型αディフェンシンの分泌が、それぞれ腸内細菌叢の破綻を起こすことを証明した。また、Paneth細胞における小胞体ストレス制御分子、オートファジー関連分子等について、遺伝子発現解析、Western blot法やWhole mount免疫染色を行って、病態形成から増悪に伴う異常を明らかにした。われわれが開発した方法でPaneth細胞を高純度にソート回収してtranscriptome解析を行い、顆粒形成、顆粒分泌や再生・分化に関わる細胞内シグナル関連分子発現の異常を対照群と比較することで明らかにした。さらに、得られたPaneth細胞内のシグナル伝達経路情報を統合し、異常なPaneth細胞で生じている分子ネットワーク全体像に関する理解を進めた。Enteroidおよびmicroinjection法を用いて、食および各種細菌等の刺激によるPaneth細胞分泌応答を評価することで、顆粒分泌と幹細胞ニッシェの機能に繋がるメカニズムを示した。また、Paneth細胞αディフェンシン低下による腸内細菌叢の異常を示すモデルマウスを用いて、腸管を中心とする免疫系の網羅的解析および腸内細菌叢解析を行って、αディフェンシンの異常による腸管粘膜免疫の破綻メカニズムを明らかにした。さらに、インフォームド・コンセントを得たクローン病患者および潰瘍性大腸炎患者から便等の臨床検体を採取し、Paneth 細胞αディフェンシンの質と量の両面から詳細な解析を行って検証を進めている。以上により、Paneth細胞を起点とする腸内エコシステム制御異常を修復・正常化することによる炎症性腸疾患治療の新たな戦略を示唆した。
2: おおむね順調に進展している
本年度研究計画に従って当初の予定通り研究を行い、その全てにおいて進展を認めた。炎症性腸疾患の病態について、Paneth細胞を起点とした腸内細菌叢をはじめとする腸内エコシステム制御の異常が寄与する可能性を示すとともに、修復・正常化におけるターゲット分子およびネットワーク候補を特定して、炎症性腸疾患の新規治療戦略の提案につながる成果を得た。したがって、本研究は当初の計画通り順調に進展している。
今後は、小腸上皮細胞であるPaneth細胞を起点とする生体恒常性の維持メカニズム、さらには、それらを異常に導くメカニズムの理解をより大きく進展させるために、炎症性腸疾患患者の臨床検体から得られる情報も基にしながら統合的な解析を行って、クローン病を中心として炎症性腸疾患の鍵となる病態を明らかにする。さらに、腸内エコシステムの制御異常を修復・正常化することによる炎症性腸疾患治療の新規治療戦略を確立する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件)
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